スタッフのチカラ

寒川町寒川文書館における公文書劣化防止事業

2010年03月26日

寒川文書館とは

神奈川県寒川町は2006年(平成18年)に寒川文書館を開館した。沖縄県北谷町に次ぐ全国で二番目となる町立の文書館である。寒川町に関する記録資料(古文書、歴史的公文書、写真、地図、刊行物など)の収集保存、利用を目的としている。

昭和61年度からの町史編纂事業で調査した数多くの町内外の個人・団体所蔵の古文書は約5万2千点に及び、65万コマ以上のマイクロフィルムに収められている。昔の寒川町の姿がわかる写真資料は複製・保存されており、利用者は一部デジタルデータ化されたものを館内のパソコンで閲覧できる。都市計画図や航空写真などの様々な地図は直接閲覧することが可能で、特に行政刊行物・図書においては約30,000冊を手に取って読むことができる。また、複本があるものにおいては、貸し出しも行っている。他にも東京国立博物館で学芸部長を務めておられた故佐藤昭夫氏の仏教美術書コレクション約8,000冊を所蔵している。

寒川町役場企画部企画課において町史編さんに携わり、寒川町の歴史資料の保存と活用に尽力してこられた髙木秀彰主査を中心に、「行政の説明責任を果たす文書館」や「みんなが足を運びたくなる文書館」など5つの基本理念を掲げ、魅力ある展示、講座などを積極的に開催しているとともに、資料整理などにボランティアが参加できる機会を多く設けている。

 

事業の概要

今回弊社では、短期の雇用・就業機会の創出を目的とする緊急雇用創出基金事業の一環として、寒川文書館が行うマイクロ化後の歴史的公文書への保全措置を請け負った。酸性紙の文書保存箱465箱分の公文書を長期的に保存するため、劣化要因となる金属類の除去、損傷部分の簡易な修補、綴じ直しが主な作業内容になる。更に、これまでの酸性の文書保存箱から弊社製のアーカイバル容器314箱への入れ替え作業も行った。弊社からの監督者1名、ハローワークを通じて採用した作業員6名で、期間は11月12日から3月26日までの計71日間だった。

 

対象資料

明治22年から昭和53年までの様々な形態(登記簿や戸籍簿などの公正証書の原本、小冊子、パンフレット、写真、図面、書簡など)の寒川町に関する歴史的公文書が、年度順に並べられた既製の文書保存箱に収められていた。資料の多くが主にステープルやクリップなど、錆による損傷の原因となる金属製の留め具でまとめられていた。また、本紙の中でも太平洋戦争中・直後(昭和15年~昭和24年)の資料には酸性紙が多く見受けられた。更に保存箱自体が非常に酸性度の高い紙で作られているため、酸の移行による資料の酸性劣化と黄変が見られる資料もあった。

 

作業内容

① 金属類の除去

金属類の除去 ステープルやクリップ等の金属類や輪ゴムはすべて除去した。

 

② 感熱紙資料の複写

感熱紙(約2,000枚)は常温で徐々に退色して情報が消えてしまうため、中性紙のコピー用紙へハードコピーをとり、原本の後ろに一緒に綴じた。

 

アーカイバル封筒・写真用封筒への入れ替え

破損した封筒は弱アルカリのアーカイバル封筒入れ替えた。また、写真はアルカリにも敏感なため、無酸・無アルカリの写真用封筒に入れ替えた。

 

④ ゲタの入れ替え

元々のゲタが酸性紙の場合は資料を傷める恐れがあるため、アーカイバルボードで新たにゲタを作製した。

 

⑤ 簡易修補

損傷のある綴じ穴は綴じ直しが困難なため、和紙とデンプン糊で簡易修補を行った

 

⑥ 綴じ直し

フォルダーまたは冊子の単位ごとに中性こよりで綴じ直した。

 

厚みのある資料は、より強度のある麻糸で二つから三つに分けて綴じ直し

 

アーカイバル容器への入れ替え

465箱分の資料への処置終了後、棚に二つ並ぶサイズに設計した組み立て式ファイルボックスに入れ替え、整理番号などを記載したラベルを貼付した。劣化の原因となるものを除去・処置した後にアーカイバル容器に入れることにより、長期的な保存が可能になり、管理しやすくなった。

 

 

 

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