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【寄稿】 第11回図書館サポートフォーラム賞表彰式での祝辞2009年09月30日安江明夫
ユニークで社会的に意義のある各種図書館活動を表彰し、図書館活動の社会的広報に寄与することを目的に設立された「図書館サポートフォーラム賞」。11回目となる今年の受賞者に、弊社スタッフの木部が選ばれました。授賞式は4月に行われたのですが、その際、推薦者のお一人である安江明夫様(元国立国会図書館副館長)からご祝辞を賜りました。今回の受賞の背景と、弊社の現在の立ち位置を明瞭簡潔に述べていただき、木部をはじめ、スタッフ一同の大いなる励みになるものでした。安江様のご快諾を得て、ここで紹介させていただきます。
安江明夫氏からの祝辞
図書館サポートフォーラム賞ご受賞の4人の皆様に、心からのお祝いを申し上げます。藤野先生と末吉さんには、長年に亘り、ご指導、ご厚情を頂いてまいりました。それだけに今回のお二人のご受賞を、大変、嬉しく存じております。お祝いを申し上げますとともに、この機会に、これまでのご指導に対し、また図書館発展のための多大なご尽力に対し、深い感謝を申し上げます。
そして次いで、資料保存器材の木部徹さん、です。
会場には、あるいは木部さんの名前をご存じない方もあるかも知れません。しかし近年、図書館などで中性紙の保存箱が多用されてきていることは大方がご存知でしょう。そのコンセプトを日本で確立し、また実践に移したのが木部さんです。中性紙保存箱の理論的根拠になっている「段階的保存」や「容器」は木部さんの造語ですし、保存箱に使用する中性ボードの開発・普及に貢献したのも木部さんです。
もう少し一般的に言えば、木部さんは、日本における現代紙資料コンサ-ベーションの理論を確立した立役者です。これは名論文「表紙は外れたままでよい」、「利用のために保存する」等に始まり、『容器に入れる–紙資料のための保存技術』、『治すから防ぐへ:西洋古刊本への保存手当て』、『目で見る「利用のための資料保存」』、さらに『IFLA図書館資料の予防的保存の原則』監訳等へと続く数多くの著作にも表れています。
その一方で、資料保存の新しい理論を実業化し、図書館等への支援として実践されてきました。それがかつてのCAT(Conservation And Technologies)という名の会社から、現在の有限会社資料保存器材へと続いている実業開拓の道筋です。
これらの理論と実践は、日本の図書館等に対する稀有な功績と言えるでしょうし、これだけで十分に高い評価と賞賛に値します。しかし広範囲に亘る木部さんの活躍のなかで、とりわけて重要な功績がもう一つあります。
木部さんは、1980年代に、『CAP本の保存のための海外ニューズ月報』を一人で編集・発行し、関係者に配布しておりました。無論、ボランティア・ワークです。関係者には有益かつ刺激的な情報誌として評価され、大変、有り難がられました。
今、それがインターネットの時代に、「ほぼ日刊資料保存」の名称で継承され、資料保存器材HPから発信されています。紙から電子へ、月刊から日刊へ、個人の努力からチームとしての取組みへと、内容も、手段も、規模も、飛躍的に発展しました。そして「ほぼ日刊資料保存」は情報ニュース・メディアであるだけでなく、その迅速な紹介、的確な分析、濃い内容のレポートが蓄積されDB化されており、資料保存のエンサイクロペディアの様相も示しています。
私は「資料保存に関わる人で「ほぼ日」を知らない人はモグリじゃないか」と冗談めかして言ったり、「必見・必読サイト」「プロならこれは知っていなければ」と言ったりしています。海外で活躍の日本人文化財保存関係者の間でも評判ですし、海外の日本研究図書館員の間でも重要な情報源として利用されています。
もしこのサイトが英語版でしたら、きっと国際文化財保存修復学会のような国際団体から既に表彰されているのではないでしょうか。それほどに素晴らしい、インパクトのあるサイトですが、その主導者、編集長が木部さんです。
木部さんには、日本の図書館と資料保存の今後の進展のために、引き続き一層、ご活躍いただきたいと願っております。そのお願いを申し添えて、お祝いの言葉といたします。
木部さん、本日は図書館サポートフォーラム賞のご受賞、本当におめでとうございました。