スタッフのチカラ サブメニュー
スタッフのチカラ
【寄稿】李珍嬉 「近代資料のコンサベーション技術を学ぶ -資料保存器材での研修報告 -」2010年12月9日李珍嬉 (韓国学中央研究院 蔵書閣 国学資料調査室 資料保存担当)
私が働いている韓国学中央研究院蔵書閣は、韓国の古典籍を6万点以上所蔵しているほか、近代資料も多数所蔵している図書館です。自分自身、この蔵書閣で保存業務を始めてから何年も経っていないことや、2011年には保存処理施設が新たに増設されることもあり、今より效率的で多様な保存修復技術について、勉強することが必要な状況でした。
そこで、様々な資料に対して多くの実績をもつ資料保存器材に研修の相談をしました。株式会社資料保存器材は、韓国内でも関連コンサーバターの間で、非常に実力がある機関として有名です。研修をする前に会社HPと公式twitterを見ていましたが、実際の作業だけでなく、保存修復に関する研究も盛んで、相当な実力があるように思われました。
同社の木部徹代表様が快く研修の許可をしてくださり、多様な保存修復方法を学ぶことができました。韓国でも直ぐに適用できるよう、理解しやすい形で教えていただいたので、研修を通じて学んだ保存修復技術と保存箱製作技術は、今後の仕事に非常に役に立つでしょう。
また、スタッフたちのスピーディな作業処理能力と、保存修復関連の最新情報を活発に取り入れている様子も勉強になりました。木部先生の情報収集力の迅速さ、情熱をもって培ってこられた多年のキャリア、それに加えてスタッフたちの協力体制と実力によって、效率的な業務を進行することができるのだと思います。
研修を承諾くださり、研修中もサポートしてくださった木部徹先生と大沢美香子専務様に感謝いたします。また、様々な保存修復方法、すなわち脱酸性化、リーフキャスティング、エンキャプシュレーションなどを詳しく教えてくださった福島希主任様、蜂谷さん、久利さん、高田さんに感謝いたします。多様な保存箱製作実習をしてくださった加藤さんにも感謝いたします。分からないことばかりの研修生に対し、親切に手助けしてくださった資料保存器材の皆さんに厚く御礼申し上げます。
研修の内容
研修の期間および内容は、以下の通りである。
期間: | 2010年9月27日~10月22日 計19日間 |
内容: | 近代の紙媒体記録資料に対する保存修復処置(一枚ものに対する一連の処置)虫損のある和装本に対するリーフキャスティング処置図書、小冊子に対する保存修復処置(簡単な綴じ直しや背の修補など)保存容器の製作 |
そのなかでも特に印象に残った技術や方法について、簡単に報告する。
①処置前の試験:スポットテスト、pHの計測
処置過程に使う水、薬品などに対するイメージ材料の反応を処置前に確認して、適合性の可否を必ずチェックしなければならない。また、pHを計測して処置の前と後の脱酸化效果を確認しなければならない。
③リーフキャスティング
紙資料は虫害や自然的な原因によって、欠損や老けなどの損傷を受けることが多い。欠損が多くある資料の場合、リーフキャスティングを利用して、比較的短時間で效果的に作業を行うことが可能だ。リーフキャスティングは、資料の欠損部に直接紙の繊維分散液を流し込んで、損傷した部分を補うことができる機械だが、2つの種類があり、機能と作業工程に差がある。私が資料保存器材で使用した吸い込み式(サクション型)のリーフキャスティングの場合、資料を簀とクロスの上に置く必要があるが、その際に空気が入らないようにすること、欠損部分を中心に繊維分散液をうまく分散させることなど、工程ごとに熟練された技術を要する。そのため、多くの練習が必要だと思う。一方、水頭圧式のリーフキャスティングについては国立公文書館で学ぶことができた。この機械は、作業工程という点ではシンプルなスタイルだと思った。
吸い込み式(サクション型)のリーフキャスティングの機械と使用する簀、作業風景 |
<処置前> | <処置後> |
国立公文書館:水頭圧式のリーフキャスティングの機械 |