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2019年11月1日(金)松竹大谷図書館様が所蔵する映画スクラップ帳のデジタル化に伴う解体・簡易補修を行いました。
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映画スクラップ帳について解説してくれた松竹大谷図書館主任司書の武藤祥子さん
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アーカイバル容器収納後の書架。画像手前に見えるのが組み立て式棚はめ込み箱。奥には映画スクラップ帳を個別に収納したタトウ式保存箱が並ぶ。
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資料をまとめて収納できる組み立て式棚はめ込み箱。棚の寸法に合わせてはめ込む形状のため書架スペースを有効活用できる。
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棚はめ込み箱の前扉は汚染ガス吸着シートGasQガスキュウ®を設置できる構造になっている。
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映画スクラップ帳を収納したタトウ式保存箱。GasQ®ガスキュウを巻いて収納した。
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解体前のスクラップ帳:各ページに新聞の切り抜きや紹介記事、スナップ写真などが貼られている。
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解体前のスクラップ帳:ポスターなど大型の資料もたたんで貼り込まれている状態。
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重ねて貼り込まれた切り抜き記事は、1枚ずつはがし、撮影しやすいようずらして貼りなおす。
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撮影時に取り扱いし易いよう和紙で部分的に補強する。
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表紙の縁の剥がれ部分は糊で留め補強する。
公益財団法人松竹大谷図書館は、1958年に開館した演劇・映画専門の私立図書館です。歌舞伎や演劇・映画に関する資料約48万点を無料で一般公開しており、所蔵する資料の保存・活用、施設の保全・運営のための資金を募るクラウドファンディングプロジェクトを2012年より毎年継続して行っています。
2017年のクラウドファンディング「第6弾 歌舞伎や映画、銀幕が伝えた記憶を宝箱で守る-映画スクラップ帳の保存プロジェクト-」では、弊社がオーダーメイドで制作したアーカイバル容器を導入しています。
映画製作当時の記事や写真が貼り込まれた映画スクラップ帳は、作られた年代によって劣化状態に差があり、特に戦前から昭和27年までに製作された映画のスクラップ帳は、紙質が悪く、経年劣化によって表紙から内部まで傷みが進んでおり、保存が大変難しい状況でした。そこで、今回、今後の利用でさらに破損が進む恐れがあるスクラップ帳の中から、松竹京都製作作品を対象に、文化庁が進めている「アーカイブ中核拠点形成モデル事業(撮影所における映画関連の非フィルム資料)」に申請、これが採択され資料の保護と活用のためのデジタル化を行うことになりました。本事業で弊社はデジタル撮影する前のスクラップ帳の解体・復元、簡易補修といった処置のご依頼を受けました。
お預かりした映画スクラップ帳は、新聞の切り抜き記事や写真のほか、大型ポスターなども貼りこまれ、重なったまま貼られている箇所は情報が見えない等々–、そのまま撮影するには困難な状態でした。そこで、必要な見開き具合を確保するための解体処置と、重ね貼りの箇所は一度はがし位置をずらして再度貼り込み、閲覧可能な状態にする処置を行いました。また、撮影者が取扱いに支障がなく安全な撮影ができるよう、破損しやすい箇所を和紙で補強したり、利用による劣化防止のため簡易補修も行いました。
弊社でお預かりしている映画スクラップ帳の処置の様子を松竹大谷図書館武藤様、井川様が見学され「松竹京都映画スクラップの補修見学@資料保存器材工房」として、同館のクラウドファンディング新着情報でご報告しています。処置を終えた映画スクラップ帳は株式会社インフォマージュでデジタル化撮影を行い、さらに弊社で元のスクラップ帳の形態へ綴じなおす復元作業を行います。作製したデジタルデータは今後、通常の館内での閲覧や、Web公開などの活用を検討されているそうです。
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組み立て式棚はめ込み箱