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防衛省防衛研究所戦史研究センター様 「戦史史料等の保存管理作業」ー 戦史史料、戦史関連図書約17万冊の保存箱への収納、および整理・配架作業2015年11月16日島田要
防衛研究所戦史研究センター史料室について
戦史研究センター史料室は、前身である図書館史料閲覧室が2001 年(平13)3月30日、歴史的資料を特別に管理する施設として総務大臣に指定され、2002 年(平14)4月1日、2011 年(平23)9月1日、組織改編を経て現在に至っています。
戦史研究センター史料室で所蔵する主な史料は、1956年(昭31)、当時復員業務を担当していた厚生省 (現在の厚生労働省)から戦史室に移管された旧帝国陸海軍の記録や、1945年(昭20)の日本の降伏に際して占領軍に押収され米国国務省公文書部から返還された文書がある。このほか、陸・海軍省の通信文書や作戦記録、個人から寄贈を受けた日誌や文書も収集・保管され、現在では、旧帝国陸海軍に関する約156,000冊(陸軍史料約58,000冊、海軍史料約37,000冊、戦史関連図書等約61,000冊)の史料を所蔵している。これらの史料は、国立公文書館と同様に一般公開され、またアジアに関する戦史史料(公文書)をデジタル化して国立公文書館アジア歴史資料センターに提供している。
防衛研究所正面玄関 | 防衛研究所戦史研究センター史料室 |
事業の概要
今回弊社では、戦史研究センター史料室様が所蔵する戦史史料群の保存箱への収納、整理・配架作業をお引き受けする機会を得た。経年劣化による傷みや、保管・移送時の負担から史料を保護し、今後、収蔵庫に保管されている貴重な史料をより管理しやすく、より長期に保存するため、史料室様と適宜協議を重ね、適切な作業方針を検討しながら実際の作業を行った。
保存箱について
戦史史料、戦史関連図書の適切な保存管理のため、サイズ、形状、強度等とともに、使用勝手や資料の配架方法等も考慮に入れた保存箱を作製した。
【保存箱の特徴】
・複数の資料を一括して収納でき充分な保護能力がある、書架の寸法に合わせたものを作製した。
・保存箱を書架に設置した後、資料の出し入れがし易いように前面の蓋が開く形状とした。
・埃や塵の侵入を防ぐため前面の開閉蓋には補強板を付与し隙間のない構造にした。
・耐荷重強度を高める為、保存箱の側面を3重構造とした。
・地震等の災害時の際にも揺れの影響で収納した資料が飛び出す事のないように、上蓋がしっかりと固定される留め具を使用した。
・資料に悪影響を与える大気汚染ガス(NOx:窒素酸化物、Sox:硫黄酸化物、硫化水素など)や室内汚染ガス(アンモニア、酢酸、ホルムアルデヒドなど)、資料から発生するVOCs(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を低減させるため、保存箱内に汚染ガス吸着シートを配置し、また交換可能な構造にした。
■保存容器および材料として使用する無酸・弱アルカリのアーカイバルボードは、紙製保存容器の国際規格ISO 16245:2009、ISO9706:1994に準拠したものを採用している。使用する材料(板紙、接着剤、不活性不織布テープ等)は、ISO18916:2007(改訂 ISO14523:1999)のPAT(Photographic Activity Test)において、材料単独およびそれらの組み合わせ(例 板紙、板紙+接着剤、板紙+不活性不織布テープ)で試験をパスした材料を使用し、さらに、揮発性酸性物検知試験(ADST:Acid Detective Strip Test)により酸性物が発生しないものを用いている。
作業工程と期間
作業期間6ヶ月、実働64日間で箱総数14,270点を作製し、閉架書庫1層から4層に保管されている戦史史料、戦史関連図書約17万冊分の保存箱への収納と整理・配架作業を履行した。
平成26年 | 平成27年 | ||||||||
12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | ||
1 | 箱納品(搬入) | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
2 | 箱組み立て(書庫内) | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
3 | 書棚の段替え | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
4 | 史料の収納作業 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
5 | 整理・再配架作業※ | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
6 | 収納状況の点検作業 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
※ 5 整理・再配架作業について:史料の収納作業を行う過程で棚に入らないサイズの大きい史料や段替えによって棚に収まらない史料は整理を行いながら作業を進めた。