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2015年03月16日(月) 内外ニュース&レポート編:デジタル化や修理のための状態調査 — 400点サンプル抽出法

資料所蔵機関がかけられる資源(ヒト、カネ、モノ)には限りがある。資料保存に振り分けられる資源も、他の分野同様に適切に配分され、無駄がないように使われなければならない。

 

雑誌のような逐次刊行物を合冊製本する際にも、すべての雑誌が対象になるわけではない。利用頻度が高いものは優先されるだろうし、利用頻度が低いものは対象にはならず、すでに内外でデジタル化されている雑誌ならば、冊子のまま紐でくるんでバラバラにならないように保管しておくだけかもしれない。また、貴重なものが少量ならば、優先的にデジタル化したり修理計画に組み込んだり、予算の手当も容易かもしれない。

 

このように「簡単」な選別基準で対象物を抽出できるが、特定の図書資料群(コレクション)や特定の文書(アーカイブズ)資料群として数千点、数万点とある場合には、このうちどのぐらいの数が傷みがひどくデジタル化による代替が必要なのか、保存容器への収納資料の数は、修理対象資料の数は—等々を事前に調査するためには、調査法に統計学的な信頼性がなければならない。また、デジタル化等の保存のための計画立案は当然予算の裏付けが必要だが、どのぐらい費用がかるのかを予測するためには、前提として事前調査による全体像の把握が必須となる。

 

以下では Carl Drott の良く知られた論文をもとに、事前調査に使うランダムサンプリング法を紹介する。統計学的な手法を使った調査法に関する文献はたくさんあるが、Drott の論文は表題通り、図書館で使うことに的を絞ったもので評価が高く、海外では広く用いられている。英国の National Preservation Office は、この方法で、図書、文書はもちろん、博物館などモノ資料にまで調査できるとし、2000年から開始した国内の図書館・アーカイブ・博物館・美術館を網羅する資料保存アセスメント(PAS)では400点調査を推奨している。また、後述のように国内での事例もある。

 

この手法のポイントは、抽出を適切に行えば、全体数がどれほど多くとも、実際のサンプル数を400足らず(正確には 384 だが、切りのよいところで400にする)にできることだ。この数からのデータを全体に敷衍したとき、統計学的には95±5 % の高い確率で当てはめられることになる。さらに読む→

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