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週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。
2021年10月11日(月)早稲田大学會津八一記念博物館様より、革装丁本の修理を承りました。
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処置前(レッドロット現象、背表紙外れ)
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処置前(背表紙地側)
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処置前(綴じから外れた糊付け図版)
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①ドライ・クリーニング
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②リタンニング処置
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③綴じ直し
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④背ごしらえ直し
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⑥接合(タケッティング法)
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⑦背表紙貼り戻し
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⑧背表紙補填
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⑨背表紙フェイシング(表打ち)
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⑩保革油塗布
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処置後
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処置後
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処置後
會津八一記念博物館は早稲田大学文学部教授を務めた美術史家の會津八一(あいづやいち)を記念して、1998年(平成10年)に早稲田大学2号館(旧・図書館)内に設置されました。収蔵品は會津八一コレクションを中心に、早稲田ゆかりの美術品や研究資料、東洋美術、考古・民族資料、日本近現代絵画、近世絵画、考古資料など多岐にわたり、現在約2万点収蔵し、毎年4、5回開催する企画展示やコレクション展示を通して学内外に広く公開しています。
早稲田大学會津八一記念博物館ホームページhttps://www.waseda.jp/culture/aizu-museum/
お預かりした革装丁本は14点。国内では収蔵されている件数が極めて少ない貴重資料であるため、データベース化に伴い、修理を検討されたそうです。資料本体には革のレッドロット化、表裏表紙・背表紙の外れ、綴じ糸の外れといった劣化損傷が見られました。また、本紙には厚手のコート紙に刷られた図版が多数含まれており、今後の閲覧による原資料の損傷を避けるため、修理とともにデジタル化を行うことになりました。
デジタル化の前処置として、構造的な劣化が見られる箇所や損傷部に対し、本体背の仮固めや革の安定化処置などの補強を施し安全に撮影できるようにしました。デジタル化後は、元の装丁・表装材を利用した修理製本を行いました。
デジタル化撮影前に行った資料への処置と修理製本までの一連の流れ
①ドライ・クリーニング:クリーナーやクロスを用いて表面のチリや埃を除去した
②レッドロット化した革への処置:リタンニングを行い安定化させた
③綴じ直し:旧背ごしらえを除去したのち、綴じが外れた箇所を麻糸で綴じ直した
④背ごしらえ直し:背に和紙や中性紙を貼り重ねて補強した。撮影前に背を仮固めすることで本体が安定し撮影時の本への負担が減る。この背ごしらえは元の背表紙を貼りもどすための土台にもなる。
〜デジタル化のため資料をご返却〜
⑤デジタル撮影:学内設備でのデジタル撮影
〜撮影後、資料を再度お預かり〜
⑥表紙と本体の接合:タケッティング法で表紙と本体を繋ぎ、背ごしらえのハネを表紙の見返しに貼り込みヒンジ部の補強とした
⑦背表紙貼り戻し:元の背表紙を背に貼り戻した
⑧背表紙補填:背表紙欠損部分を和紙や中性紙で補填した
⑨背表紙の補強:元の背表紙表面を補強するため染色した極薄の和紙を貼った
⑩保革油塗布:革装部分へ保革油を塗布し馴染ませた
修理を終えた資料は會津八一記念博物館2階グランドギャラリーで開催中の企画展で展示されています。
▼企画展『山内清男コレクション受贈記念 山内清男の考古学』
https://www.waseda.jp/culture/aizu-museum/news/2021/06/24/3492/
この度の事例紹介にあたり、 早稲田大学會津八一記念博物館様より掲載のご協力をいただきました。誠にありがとうございました。