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2021年4月7日(水)修理を通して知る『ちりめん本(縮緬本)』の魅力
明治時代に生まれた絵入りの本に「ちりめん本(縮緬本)」と呼ばれている書物があります。多色刷り木版の挿絵と活版印刷の欧文活字を和紙に印刷し、後から織物のちりめん生地によく似た細かい皺(凹凸)加工を施し和綴じされた欧文和装本です。そのしなやかで温かみのある独特の手触りと、錦絵のような色鮮やかな美しい挿絵から、異国情緒の溢れた書物として日本を訪れた外国人に大変人気だったそうです。ちりめん本は外語学習用に作成されたとも言われていますが、その実態や刊行されたタイトルがどれほどあったのかということについては、未だ熱心な研究が続いています。
弊社では、ちりめん本の修理をご依頼いただく事があります。その損傷は、柱の切れや角裂の擦り切れ、綴じ糸のほつれ、紙のヤケ、シミなど、和装本に似た傷みがほとんどですが、なかにはこのユニークな書物ならではの損傷を目にすることがあります。それは、本紙の袋綴じ部分が意図的に切り開かれている、という損傷です。旧来のヨーロッパの製本では、本の小口を断裁せずに仮綴じして仕上げた状態(アンカット本とよばれ全ページが袋綴じの状態)で販売し、ペーパーナイフを使って、袋綴じ部分を開きながら読み進める習慣があり、読み終わったら自分好みに製本するというのが一般的でした。そのため、日本から持ち帰られたちりめん本の袋綴じの構造を見て、アンカット本と認識してしまい、本紙の柱(袋綴じした版本の中央部分)をカットした、という経緯が思い起こされます。本紙数丁をカットしたものの袋綴じの内側は裏白であることに気付いたのか、途中からカットされていないものもあります。こうしたちりめん本の損傷から、今もあるような文化の違いを知るとても興味深い発見と楽しさがあります。
ちりめん本の修理について付け加えると、水分を多く含むと和紙に施した柔らかいクレープ状の加工や元々のしなやかな手触りがとれてしまうため、修補で使用する糊の水分量や折れ伸ばしの加湿調整、さらにフラットニングの圧力加減などに慎重さを要します。