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2018年1月17日(水)【文献紹介】国際原子力機関(IAEA)が『文化財保存のための放射線の利用』を刊行
医療機器や衛生用品などの滅菌に使われている放射線照射技術の文化財への応用の現状をまとめた USES OF IONIZING RADIATION FOR TANGIBLE CULTURAL HERITAGE CONSERVATION (有形文化財の保存のための電離放射線の利用)が、このほど国際原子力機関(IAEA)から刊行された。この分野での初の、学際的かつ国際的な研究成果報告といえる。
γ線などの電離放射線をカビや虫のいる物体に照射・ 侵入させると、電離作用により、カビや虫のDNAの二重らせん構造の鎖切断(放射線の直接効果)が生じる。また、生体中の水も電離されてOHラジカル等が生じ、これらのイオンとラジカルの反応でDNAに不都合な塩基等が生成されるのがDNA塩基損傷である(放射線の間接作用)。結果的にカビや虫が死滅する。
本書は、世界の原子力関連科学者、技術者、生物学者、保存化学者が博物館・ 美術館等と協力し、滅菌・ 殺虫の原理と科学的な根拠の解説とともに、各国(オランダ、ルーマニア、フランス、ブラジル、ポーランド、ポルトガル、クロアチア、ブラジル、チュニジア)での、木、紙、皮革、ウール、絹などでできた様々な文化財や、エジプトのミイラ、マンモスの幼児などの考古資料などへの応用事例を紹介している。
USES OF IONIZING RADIATION FOR TANGIBLE CULTURAL HERITAGE CONSERVATION
IAEA Radiation Technology Series No. 6、241 pp.; 92 figs.; 2017; ISBN: 978-92-0-103316-1, English, 50.00Euro
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