今日の工房 

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2019年5月29日(水)夏休み明けの書庫にカビを発生させないために今、できること

昨年は猛暑が続いたこともあってか、特に夏休み明けの8、9月、さらに10月になってからも、書庫の資料にカビが生えてしまったので何とかしたい、という問い合わせをたくさんいただきました。ここ数日の5月とは思えない猛暑を体感すると、今年の夏も昨年並みになりそうで、カビ被害が増えるのではないかと心配しております。

 

昨年のカビ発生要因として一番多かったのは空調管理の不備によるものです。

 

・メンテナンスを怠り、空調が故障していた。
・冬の間、除湿器を停止し、そのまま春夏もつけ忘れてしまっていた。

 

など、特に閉架書庫などで人の出入りが少なく、気づいた時にはカビが発生していた、といことが多かったようです。

 

カビ胞子は空気中どこにでも存在するもので、カビが好む環境が整えばすぐに活性化したカビとなります。上記のような書庫の場合は、空気中に浮遊しているカビ胞子が資料表面の塵や埃を温床とし、空調の停止により湿度があがり、カビが活性化したということです。

 

これからの季節に備え、今の時期に書庫の空調の確認、資料のクリーニングをお勧めいたします。

 

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2019年5月22日(水)アーカイバル容器の折り筋に骨ヘラでひと手間加えると、仕上がりがいちだんときれいになります。

弊社ではさまざまな形状や用途の保存箱を製作していますが、どの箱も弱アルカリ性のアーカイバルボードを折り込んだり貼り合わせて箱の形にしています。特に折り部分の加工は箱の成形にとって重要な部分で、そのひとつひとつが仕上がりに関わってきます。

 

この折り部分の加工で活躍するのが骨ヘラです。骨ヘラはボードや紙に筋を入れたり、折ったり、角をおさえたり、ほとんど手のように使う一番身近な道具です。

 

ボードの折り込み部分には機械で押圧した罫線や切込を入れますが、保存箱の素材として使われるアーカイバルボードは普通の段ボールをはるかに上回る硬さと強度をもつことから、そのままボードを折り込むと折線に沿って重なる紙同士の厚みで「反発」が生じます。この反発を解消せずに組み立てた箱は折り込み箇所が膨らみ、隙間や歪み、サイズが合わないなどといった不具合の原因になることがあります。

 

そこで、骨ヘラを使い、折線がV字型になるような筋をさらに入れて、ボードの反発を相殺し抵抗なくきれいにボードを折り込めるよう正確な折り込みラインを入れます。

 

また、完成した箱の角をヘラでひと撫でするだけでフォルムが整うので、見栄えの良いきっちりとした箱に仕上げる決め手として大変重宝しています。

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2019年5月15日(水)NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。

NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。

 

ゲーム保存協会では、旧世代のデジタルゲームを扱う中で、フロッピーディスクやカセットテープなどのメディアを数多く所蔵しており、なかでも80年代のゲーム文化黄金期を伝える資料的意義の高い5.25インチフロッピーディスクと3.5インチフロッピーディスクの現物保管に注力している。併せてゲーム・デジタル・アーカイブとデータベース構築をすすめており文化財として継承に耐えうる適切な形での資料の保存に力を尽くしている。

 

フロッピーディスクには8インチ、5.25インチ、3.5インチなど様々な種類があり、これら磁気ディスクは湿気やホコリなどの汚れ、汚染ガス等の影響を受けやすい非常にデリケートなメディアだが、特にカビによる劣化に弱く、湿気の多い日本では保管に特別な注意が必要な資料である。

 

保存容器は酢酸他のVOCを吸着する汚染ガス吸着シートGasQ®を組み込んだ新きりなみ仕様。ガス吸着機能とともに、容器内の相対湿度を安定させる調湿効果を発揮し、環境要因からくる収納物の劣化を最大限に抑制できる。ゲーム資料は各々QRコードで管理され、中性紙でできた封筒と専用の保存容器に収納し、一定の温度・湿度管理のもとに保管されている。

 

関連情報

◆  Yahoo!Japan ニュース 2019年4月26日  コレクションは何と10万点! 有志の熱意と技術を結集したゲーム保存協会の取り組み

『今日の工房』2017年1月12日(木) ゲーム資料保存の喚起を促す小冊子『ゲーム保存の意義とその実践』–国内外の現状と課題、データ記録媒体の基本知識や保存等の実例も

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2019年5月8日(水)差し込み箱から、より安全・容易に資料を取り出すためのお包み(上智大学史資料室様)

上智大学史資料室様から額装絵画を、これまでの茶段ボール製の差し箱からアーカイバル容器への入れ替えのご依頼をいただきました。

 

保存容器は保存容器の側面から資料を出し入れする差し込み箱。出し入れの際には、額装絵画に直接触れずに安全かつ容易に行いたいとのご要望です。

 

そこで、これまで使用されてきた不確かな素材の布袋に代わり、 アーカイバルボードでのロの字お包みを作製しました。強度もあり、資料に負担のない出し入れが可能となりました。

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2019年4月24日(水)紙の酸性度を測るためのメルク社のpHストリップの使い方。

資料の修理にとりかかる前の作業として、カルテの作成、状態撮影、スポット・テストとpH測定(※1)があります。なかでも、紙の酸性度合いをみるためのpH測定は、紙媒体記録資料の修理においてかかせない工程のひとつです。

 

和紙に墨書きされた文書や版本とは異なり、種類が豊富な近現代の文書や書籍の紙は、その劣化要因も損傷状況も様々です。特に、近現代の資料は、酸性紙問題(※2)として指摘されるように、紙の内部で化学的な酸性化が進むことで、紙力低下、それに伴う破れや欠損などの重篤な物理的損傷につながる恐れがあります。

 

こうした紙に対する修理技術の一つとして、紙中の酸を中和し内部にアルカリ・バッファー(※3)を残すための「脱酸性化処置」があります。pH値は、その化学的損傷度合いと、脱酸性化処置が問題なく、また、万遍なく行われたかを見るための指標として計測されます。pH値と、中和後のアルカリ・バッファー量とは全く別のものではあるものの、劣化度合いを測るためのいくつかある指標の中で、紙の保存性と密接につながっているといえます。

 

pHは、元々液体の水や水溶性の液体の酸性やアルカリ性を示す指標ですが、固体である紙にはそのままでは適用できません。厳密に紙のpHを測るときは、細かくカットした紙片を水の中に入れて、しばらく置いてから電極式のpH計測器で測定(JIS P 8133 1)しますが、この方法はいわゆる破壊的なサンプリング・テストになるので、修理の工程で行われることはほぼありません。代わりに使用されるのが「pHストリップ」です。これは、指示薬が塗布されている面をわずかな水分で濡らし、紙の表面と接触させ、その変色具合でpHを測定するという方法で、弊社ではメルク社のpHストリップを使用しています。

 

この方法で計測するのは紙の表面pHなので、厚みがあるものや、水の浸透性がよくない紙の内部のpHを測ることはできません。ただし、裏まで水が抜けるような紙質であればかなり正確に測定できます。

 

pHストリップの指示薬は水に濡れても色移りすることはありませんが、あまり水分が多いと、計測する紙の方がヨレたり、輪染みといわれる円形のシミを作ってしまうことがあります。pH測定もスポット・テスト同様、接触させる面をなるべく最小限に留めるために、例えば指示薬部分を半分に切って使用したり、計測後はすぐにろ紙を当ててしっかりと水分を取り除いたり、もちろん、水に滲むようなインクや色材の箇所では行わないなど、事前の準備を整えて行います。

 

[測り方]
①pHストリップを縦半分に切り、指示薬の部分も半分くらいにカットする。ポリエステルフィルムなどの小片を、計測する紙の下に敷く。
②蒸留水(脱イオン水であること)で、pHストリップの指示薬のついた面を湿らせる。浸したり、スポイトなどで滴下する。余分な水分はろ紙に吸い取らせる。
③指示薬の面を紙表面にあてて、上からもう一枚のフィルムで挟みマリネする。指で軽く押さえたり、ごく軽い重しを載せる。
④1分ほど経ったらストリップを外して、変色具合をカラーチャートと比較しpH値を確認する。

 

 

※1 pH:「水素イオン濃度指数」のこと。0~14までの数値によって水溶液の酸性またはアルカリ性の程度を表す。水溶液中のイオン化した水素イオン(H+)と、対極する水酸化物イオン(OH-)が同量存在するときが中性(pH7)、水素イオン濃度が上回ると酸性、逆に水酸化物イオンが多いとアルカリ性を示す。pはポテンシャル(potential)、Hは水素(Hydrogen)。

 

※2 酸性紙問題:紙の製造過程において、サイズ剤(にじみ止め)である「ロジン(松ヤニ)」の定着剤として、「硫酸アルミニウム(硫酸バンド)」が、19世紀後半から1980年代にかけて生産された紙に用いられた。硫酸アルミニウムと紙中の水分が反応することで強い硫酸が生成され、これが触媒となって紙のセルロースを加水分解し破断させる。さらに、硫酸の脱水作用により、潤滑油のような役割を担っている紙中の水分が奪われ、繊維の角質化が起こり紙が脆くなる。製造から50年足らずで紙力が極端に落ちてしまう資料が図書館やアーカイブズに大量に所蔵されていることが世界的な問題となり、これを契機に、中性紙の国際規格制定へとつながった。

 

※3 アルカリ・バッファー:紙中や大気中の酸性物質による劣化を予防するために紙に保持させるアルカリ残留物。ISO9706:1994 Paper for documents Requirements for permanence(永く残る紙)で定めている長期保存用紙の場合、「乾燥重量比で2%の炭酸カルシウム相当量を含んでいること」とされるが、文書や書籍の紙として長期に置かれ、かつ、すでに酸性化した紙に対して行う中和後のバッファー付与で、これだけの量を残留させることは難しい。

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2019年4月17日(水)バインダー内の分類や仕切りに最適なタブ付きインデックスシート。

アーカイバル・バインダー内での分類・仕切りに使う中性紙製タブ付きインデックスシート。タブは見やすい山ずれ見出し式で、資料リストと連動したコードや管理番号などを印刷したラベルを貼れば、 ファイリングした資料をすばやく検索し、かんたんに識別できます。

 

とくに資料形態が多様な写真系資料の整理には最適で、形態・種類・年代などの大まかな分類で整理したものでもインデックスシートで仕切ればアーカイバル・バインダー1冊で一括収納・保管できます。

 

中性紙を使用しているのでインデックスシート自体にも印刷できます。例えば、資料形態(紙焼き、ネガ・ポジフィルム等)、撮影年月日、資料の中身(何の写真か)、保管場所などの「索引情報」をシートに印刷すれば、開かなくても中身が分かるような写真台帳としても使えます。

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2019年4月3日(水)大型箱の組み立ての時は、複数のスタッフで「せぇの!」と掛け声を合わせながら。

1辺が150㎝を超えるような大型箱を製作するときは複数のスタッフで組み立てを行っています。大きな部材の取り回しや接着剤の塗布、成形など、ひとりではとてもできない作業を分担し、無駄のない動線や立ち位置、道具の置き場所にも気を配りながら作業の流れを作っていきます。

 

また、動作のタイミングを合わせるときには必ず「せぇの!」と掛け声をかけるのが習わしで(うっかり言い忘れると怒られることも・・・)、お互いに息を合わせながら梱包までの作業を進めます。毎日様々なサイズや構造の箱を手掛けますが、こうしたスタッフの緊密な連携作業が常に製作を支えています。

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2019年3月13日(水)絹布上に描かれた大型の曼荼羅作品を安全に移送と保管ができる保存箱。

二点一対になっている両界曼荼羅図の復元模写作品を収納する保存箱。曼荼羅は染色した綾織りの絹の上に金泥で描かれており、作品本体を四方から糸で木枠に張り、木枠ごと壁に掛けて展示できる。

 

ご依頼者からは作品の移送も安全に行える保存箱をご所望いただき、持ち運びの際にたわみやゆがみの起きない強固な構造の被せ蓋式の箱を製作した。箱内部で描画面が箱の内壁に接触しないように、木枠部分を文化財保護用のフォーム材AZOTE®(プラスタゾート)で固定する設計になっている。また、 平置きで保管する際に作品本体が絹布の糸の緩みで垂れ下がってくるのを防ぐために、AZOTE ® を本紙周囲の張り手部分(中に竹の芯棒が入っている)の裏面側に設置し、作品本紙を支えている。さらに、箱の身と蓋はボアテープで固定するので、箱を立てての移送も安全に行うことができる。

 

保管時は、作品の木枠から放散される酸性ガス対策と描画面の保護のために、汚染ガス吸着シート「GasQ ガスキュウ」で作品を覆っている。

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2019年3月6日(水)年度末までのご納品に間に合うようにと、工房はいまフル回転です。

例年と同様、年度末を控えた工房はいま繁忙期真っ只中です。スタッフはフル回転で仕事に取り組んでいます。完成した保存容器、修理の終わった資料は、お出しする書類の最終確認後、順次お客様の元へ発送、ご納品に伺っております。今年度は遠方の関西や九州からのご依頼も多く、早めの対応を心掛けております。また、ご納品と併せて、修理と保存容器の両部門共に新しい案件のご相談もいただき、おかげさまで次年度も忙しい一年になりそうです。

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2019年2月27日(水)資料の同じシリーズや付属品を一つの箱に収納する場合、立体パズルのように設計していきます。

関連する同じシリーズの資料や付属品を、一つの箱に入れて、分かりやすく管理したいというご依頼をいただくことがあります。そういった場合は、立体パズルのように考えて箱を設計していきます。

 

まずは、お客様から収蔵場所の状態や棚の寸法をお伺いして、箱全体のサイズを想定します。基本的には、視認性や小スペースを考慮し、仕切りでスペースを分けて製作しますが、大きさや重さが極端に違う場合、全体のバランスを考えて設計します。例えば、1点だけ大きくて重く、他が軽い場合は、重いものを下に、軽いものを上に収納できる2階建構造にして、重心のバランスがとれるようにします。

 

他にも、資料が取り出しやすい工夫をしています。

 

画像①:余ったスペースを埋めるスペーサー。指かけがついており、スペーサーを取り外せば、資料も取り出しやすい。

画像②:淵に切りかけをつけて、資料を取り出しやすくする。

画像③:大きく重たい資料でも、手を入れ、安定して持つことができる。

 

それぞれの資料の材質によっては、同じ一つの箱に収納することはお勧めできない場合もございますので、都度当方からご提案をさせていただき、最終仕様を決定します。

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2019年2月20日(水)修理前に行うスポット・ テストとサンプリング・ テストとは?

修理にとりかかる前に行う作業として、カルテの作成、状態撮影、さらにスポットテストとpH測定があります。このうちスポット・テストは大別すると2種類に分けられ、目的がそれぞれ異なります。

 

まず一つは、資料の基材となる紙やイメージ材料に対して、スポット(点)状に試薬を接触させて行うテストです。このテストでは、処置に使用する水溶液や溶剤に対し、修理対象となる紙やインクがどのような反応を示すかを見ています。例えば水に「滲むか滲まないか」だけでなく、その程度や感度、脆弱性をみることで、想定する処置をより具体的にシミュレーションすることが可能となり、場合によってはこの段階で処置方法を再考し、より効果的な手法に転換できることもあります。簡便さ、速さが利点ではありますが、試薬を接触させることで見た目を変えることがないよう、テスト範囲は最小限に留める必要があります。一紙面の中でもどの箇所で行うべきかは慎重に判断しなければなりません。

 

もう一つは、本紙から落ちた微細な破片や、資料を構成する付属材料(粘・接着剤など)に対して試薬を用いて行うサンプリング・ テストです。反応をみるためのスポット・テストとは異なり、本紙や付属材料に含まれる物質を識別するために行います。精密な検査を求める場合はより専門的な分析機器が必要になりますが、修理の方向性を見定めたい時には短時間かつ目視で分かりやすく判別することが可能です。例えば試薬の一つにデンプンを検出する「よう素よう化カリウム溶液」があります。これは、過去の補修時にデンプン糊が使用されたことが分かれば、その補修紙を除去する際、デンプン糊の接着力を緩ませるために水を用いた水性処置は効果的で安全性が高いという判断ができます。

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2019年2月6日(水)東京文化財研究所様からのご依頼で、閲覧や資料複写時の支持具を安定した品質のフォーム材で作成。

東京文化財研究所文化財情報資料部に所属する研究員様が進めている科研費課題[※1]の一環で、同研究所資料閲覧室の閲覧机や複写台で使う、脆弱な資料を閲覧・撮影するための支持具を作成した。

 

支持具の盤面はAZOTE®(エイゾート)[※2]と呼ばれる文化財保護用のフォームマットを使った。マットは湾曲や折れ曲がり防止のため中性紙の厚紙に貼り合わせた。表地がグレー、裏地が黒のリバーシブル構造になっているのが特徴で、撮影した画像の用途等に合わせて地の切り替えが可能。複写台の幅と奥行きに合わせて設計されているため撮影台のスペースを有効に使え、資料がきれいに撮影できのせたまま安全に移動できる。

 

[※1] 科研費課題「ポスト1968年表現共同体の研究:松澤宥アーカイブズを基軸として」研究代表者 橘川英規氏(東京文化財研究所文化財情報資料部)

 

[※2] AZOTE®(エイゾート):文化財保護用のフォームマット
ポリエチレン樹脂を特殊発泡させたフォームマット。一般的なフォーム材の製造には化学発泡剤が使われており、発泡体に残留したホルムアルデヒドやアンモニア系のガスが接触した資料に腐食や染みを起こす原因となることがある。AZOTE®は化学発泡剤を用いない超臨界窒素ガス発泡方式で製造され、有害ガスを放出する危険がない素材。また純粋なポリエチレンが原料なので対候性や耐薬品性も高く、一つ一つの気泡が均一なため物理的強度が高く耐水性にも優れている。ヨーロッパ諸国の博物館・美術館では壊れやすい美術品や資料の収納・梱包、引き出しや箱のライニング、額装など 多目的に使われている。その他、精密機器や軍需品など様々な分野での輸送にも採用されている。PAT(ISO18916:2007長期保存用包材のための写真活性度試験)もパスしており、直接資料に長期間接しても問題のないことを確認している。

 

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2019年1月30日(水)東京大学総合図書館から14名の方々をお招きし、保存容器と修理の部門をご案内しました。

東京大学総合図書館の職員の方々14名を弊社の見学にお招きし、保存容器制作部門と修理部門のそれぞれをご案内致しました。

 

制作部門では、保存容器に収納する資料や作品の採寸から部材の切り出し、組み立てまでの流れをご覧いただいたほか、無酸素パック『モルデナイベ』や『ドライクリーニング・ボックス』の解説や事例をご紹介しました。

 

修理部門では、スタッフそれぞれが担当しているお客様の資料の処置工程をご覧頂きました。和装本、ポスター、新聞、簿冊、小冊子、洋装本などといった形態の資料の、手繕い、リーフ・キャスティング、裏打ち、脱酸性化処置、デジタル化の撮影前後の手当て、エンキャプシュレーション、修理製本などの処置工程や処置の使い分けをご紹介しました。職員の方の中には、館内で修補を行っている方もおられるとのことで、貴重な意見交換もできました。見学後、「職員のなかでの資料保存についての選択肢が広がった。」との感想をいただきました。

 

見学中、採寸道具に大きな関心を持ってくださったことをきっかけに、見学後に初代(約23歳)の採寸道具を久しぶりに出して組み立て、触れてしみじみ味わいました。(最後の2枚の画像が採寸道具。白い本体が初代。もう一台が現役。)

 

今回の見学も、スタッフ一同、大変勉強になりました。東京大学総合図書館の職員の方々には、お忙しい中ご来社くださり、心より感謝申し上げます。

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2019年1月23日(水)版画やデッサンなどの紙に描かれた作品類をまとめて保管するには。

版画やデッサンなどの紙の上に描かれた作品類をまとめて箱に入れて保管する際、作品と作品の間に一枚ずつ間紙を挟んだり、それぞれの作品を二つ折りフォルダーに挟むことがある。どちらも作品の保護や色移りの防止などに役立つ包材だが、上手く使い分けることでより効率的な保管ができる。

 

作品を取り出すことが多い、整理番号を明記したいなど個別に扱うことが多い場合は一点ずつ二つ折りフォルダーに挟み、フォルダーごと扱えば作品の保護にもなるし管理もしやすい。

 

一方、作品を取り出すことがほとんどなく、なるべく嵩ばらないように保管したい場合は、薄手の間紙で十分間に合う。包材の紙質については作品の素材や大きさも考慮しながら、厚みや表面のなめらかさなどを検討すると良い。

 

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2019年1月16日(水)厚い台紙の写真アルバムを修理する。

厚い本文台紙の端を接着剤で貼り合わせて冊子状にした写真アルバム。貼り付ける写真の紙の厚み分を、台紙の端をL字に折って作り、折ったところを隣りの台紙の端に貼り合わせている。

 

表紙が外れ、台紙の切れや剥がれが起きている。剥がれた台紙を貼り合わせたのち、背ごしらえして表紙と再接合する処置を行う。一般的な書籍の場合は見開いた際に背を支えるよう、和紙をしっかりと貼り重ねて背ごしらえを行うが、この形態の資料は台紙が厚く柔軟性がないため、厚い背ごしらえを行うと見開けなくなってしまう。そのため、和紙の他に薄くとも強度がある寒冷紗を背ごしらえに使い、柔軟な動きに対応できる背を作った。

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2019年1月9日(水)明けましておめでとうございます。今年は弊社の、次の20年に向けての新たなスタートの年です。

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。旧年中は格別のご愛願を賜り、厚く御礼申し上げます。

 

お陰をもちまして、弊社は昨年、創立20周年を迎えました。これもひとえに皆様方のご支援の賜物であり、スタッフ一同心より感謝申し上げます。

 

 

今年は、次の20年に向けての新たなスタートの年といたします。今後とも変わらぬお引き立ての程、何卒よろしくお願い申し上げます。

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2018年12月26日(水)全長4メートルの大型保存箱を製作しました。

全長が4メートル近くある長大な額装書画用の保存箱。箱の床面と壁面を複数のパーツに分割し、それぞれのパーツはアーカイバルボードを継いで4メートルの長さにつなぎ合わせた。ボードの継ぎ目をレンガ積みの様に少しずつずらしながら5重に積層して、箱がたわまない強度に設計した。額裏に固定されている吊り金具などの突起物が箱の床にめり込むことを防ぐため、全面にクッション材のポリエチレンフォーム「プラスタゾート」を敷き詰めた。着脱式のスペーサーを取り外すと、額を収納する際に手を入れる空間ができる。完成した箱は厳重に梱包し、スタッフ10名がかりで出荷作業を行った。

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2018年12月5日(水)東京都美術館様のアルバム貼付写真6,650枚への保存手当てを承りました。

公益財団法人東京都歴史文化財団東京都美術館様より、アルバムに収められた写真や文書のアーカイブズ資料への長期保存手当てのご依頼を承りました。

 

▶︎対象資料:工事記録や展示記録などの写真資料
       アルバム点数:73 冊

       写真・文書点数:約 6,650 枚

       資料サイズ:1cm 四方のキャプション~A4 まで様々

 

アルバムの台紙、粘着剤、粘着テープには、酸化・ 酸性化による変色が見受けられた。また、写真画像の周辺が銀鏡化しているものもあった。

 

写真や文書を台紙から取り出すにあたり、スパチュラなどを用いて慎重に外した。写真の裏面に残った粘・ 接着剤は、ヤスリなどで取り除いた。台紙に直接書き込まれたキャプションは、中性紙に情報を出力した。処置を終えた資料は、サイズに応じたリフィルへ、オリジナルの並び順に入れた上で、リング・バインダー式保存容器に収めた。

 

サイズも形態も様々なアルバム 73 冊に収納されていた写真・文書資料が、14 箱の新規保存容器に収まったことで、書庫内の省スペース化にもなり、また容器が均一に揃ったことで、検索や閲覧の際も扱いやすくなったと、お客様から感想をいただきました。

 

 

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2018年11月28日(水) 和書や漢籍の展示に支持具、展示形状に合わせてパーツを組み合わせて使用。

洋書に比べて書物全体が柔らかい和書や漢籍を展示する際にきれいに見開き、綴じなどに負荷がかからない支持具を考案した。

 

和書や漢籍を見開いた際の形状に沿うアーチ形のパーツをアーカイバルボードで作成した。資料全体を適切な角度でも保持できる。

 

また、「見返し題」、「序題」、「奥書」などの箇所を見開いた場合に、左右が不均衡になり安定しない時に適した傾斜型や平型の支持具も試作した。パーツとして組み合わせて使えば、開き角度を調整できて安定した展示ができる。

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2018年11月21日(水)新潟大学で開催された「第5回全国史料ネット研究交流集会」に出展し、モルデナイベやドラクリボックスへのご意見を頂きました。

11月17日(土)、18日(日)の両日、新潟大学中央図書館ライブラリーホールを会場に「第5回全国史料ネット研究交流集会」が開催されました。プログラムは講演や、事業報告、各地の史料ネットの報告やポスターセッションがメインですが、弊社も、各地で被災資料の救出に使っていただいている「Moldenybe®モルデナイベ」や「ドライクリーニングボックス」を実際に見てもらえる場として、展示の機会をいただきました。

 

講演や発表では、史料ネットワークだけでなく、県や市など行政、大学等との連携、地域住民への情報の発信など様々な課題はありつつも、史料ネットが開設されるきっかけとなった阪神淡路大震災以降、様々な災害で得た経験が生かされ、地元や、他地域のネットワークとの連携して被災した資料の保存にあたっている報告が印象的でした。

 

当社のブースでは、ご来場いただいた皆様から、以下のようなご質問やご意見を直接伺うことができ大変参考になりました。今後の製品開発に活かしていきたいと思います。

 

 

▶︎Moldenybe®モルデナイベ
「水にぬれた資料を乾燥後、隔離用に使っています」
「作業に特別な道具などがいらず、手軽にパックできるのがいい」
「仕様の無酸素期間を終えた後も、袋の中が無酸素を維持しているかを手軽に確認できるといい」

       ※このご質問には「仕様には保証期間として3ヶ月とありますが、それ以上経過しても

         エージレスがピンク色である限りは無酸素状態を維持しています」とお答えしました。

「ガスバリア袋を1枚単位で購入したい」

 

▶︎ドライクリーニングボックス
「軽くて、持ち運びが楽」
「場所に余裕がないので、組み立て式なのは助かる」
「カビがひどい資料には空気清浄機の吸引力がもう少し高いと安心できる」
「せっかく軽くて持ち運びしやすいのだから、梱包箱に持ち手があるとうれしい」

 

弊社ブースにお立ちより下さった皆様と、展示についてご快諾いただいた第5回史料ネット研究交流集会実行委員会の方々に心より御礼申し上げます。

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