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2015年04月15日(水) 日本航空史を語るグライダー部品用の大型保存箱を東京文化財研究所に
東京文化財研究所 保存修復科学センター 近代文化遺産研究室様からのご依頼を受け大型保存箱を作成した。収納される資料は、同研究所と財団法人日本航空協会様との共同研究「航空資料保存の研究」のため、研究所に収蔵されているグライダーの部品類(水平尾翼、主翼の一部、方向蛇)。日本の航空史を物語る貴重な資料として現在調査・保存処置などを実施している。
全長が3メートルを超える長尺の箱は歪みが生じないよう堅牢な作りに。また巨大な湾曲形状の翼をしっかり支えられるように弾力のある綿布団を作成し土台に組み込んだ。絵画や木製彫刻、陶芸品などの美術工芸品の収納・保管に使う綿布団は、外部からの衝撃や振動を和らげるだけでなく、立体面のカーブ、凹凸など、ものの形状に合わせ包み込むように支えるため、箱内部で文化財を安定させる。コットンライクな柔軟性とクッション性を持ち、部分的に入れるだけでも充分に固定できる。綿と表面の不織布は不活性の100%ポリエステル製。緩衝材としての機能を維持しつつ、文化財の長期保存に適した素材を使用している。
2015年04月01日(水) 2双の屏風をコンパクトに収納。東洋大学井上円了記念博物館様向け保存容器の事例
東洋大学井上円了記念博物館は、東洋大学内に設置され、大学の歴史資料を保存展示しており、学祖井上円了の建学の精神を学内外に広める役割を担っている。今回、質も損傷度合いも悪い木箱に収納されている屏風用に、アーカイバル容器の製作依頼があった。屏風サイズに合わせるだけでなく、新収蔵庫のデッドスペースを有効活用するという命題もあった。
これまでは、屏風1隻につき1箱を作製していたが、2双まとめて収納できるようにした。資料の取り出し及び現状確認が容易にできるよう、蓋は前面パネル式とし完全に取り外せるようにした。また、地震などの振動で勝手に開くことがないよう、マジックテープでの固定式とした。上げ底にもすることで、地面から吹き上げられた埃の侵入を大幅に抑えることができる。
元から備え付けられた什器のように、周りとの違和感もなく、資料にも隙間にもピッタリの保存容器ができた。元の木製の箱が排除されたことで環境も整備され、また、スペースも生まれたことでよりよい収蔵庫環境となった。
2015年03月30日(月) 内外ニュース&レポート編:視覚障害者用の本(1840年刊)を修理する
凹凸のエンボス加工が施された視覚障害者向けの本(braille-embossed book)の修理は、平滑な紙面に印刷された普通の本とは異なる修理法が必要になる。その本が古く貴重な資料の場合の修理のポイントは、利用や経時によって劣化したエンボスを、再び人がなぞって読めるようにする「安定化と強化」処置だ。その事例がIADA(Internationale Arbeitsgemeinschaft der Archiv-, Bibliotheks- und Graphik-Restauratoren)の機関紙 Journal of PaperConservation (2014, 15−4)にHAND-READING:The Conservation of Braille-Embossed Books として掲載されている。
処置対象は1840年に発行された視覚障害を持つ学生向けの数学の教本 Elements d’arithmetique。いわゆる「点」字ではなく、エンボス形状は普通の活字の凸型である。(ルイ・ブライユがアルファベット点字を開発したのは1842年、これが普及したのは1850年代から)。「安定化と強化」のために次の材料が試された。デンプン糊と楮和紙、ポリメチルヒドロキシセルロース(Tylose® MH 300 P)、エチルアクリレート+メチルメタアクリレートのコポリマー(Plextol B500©)、アクリル樹脂(Paraloid B72©)。これらを塗布含浸させたサンプル紙(点状のエンボス)を、人の指先の「なぞる」のを模した装置にかけて、その後に耐摩耗性を測った。この結果、Plextolは好結果だったが、水とエタノールに溶解させたTyloseはさらに良好な耐久性を示した。しかしその他の材料はドット状のエンボスの先や形状に影響が出た。Tyloseはまた可逆性にも優れることも解った。
2015年03月27日(金) 無酸素パックの大型タイプを開発—-段ボール4箱をそのままパックして安全に殺虫
「無酸素パック Moldenybeモルデナイベ®」の大型タイプを開発した。図書や文書向けの従来サイズ(40L:ほぼ段ボール箱ひとつの容積)に比べ容積は約10倍(450L)。茶段ボール製文書箱や中性文書保存箱を積み重ねて密封できるので、資料の移送時や受け入れ時に箱ごとまとめて、また民具資料、博物資料、遺物等、大型の文化財も、容積内ならば簡単に無酸素殺虫処理ができる。袋の中には脱酸素剤を入れるだけで、他の化学薬剤を使用せず、なおかつ材質への影響がほとんどない方法で、資料にも人にも安全である。
文化財の害虫12種類(カツオブシムシ、オビカツオブシムシ。ヒラタコクヌストモドキ、ヒメマダラカツオブシムシ、キクイムシ、タバコシバンムシ、マダラシミ、アメリカカンザイシロアリ、コイカ、チャオビゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ)の成虫、幼虫/若虫、卵に対して、どのぐらいの期間、無酸素下で生存し、その後に致死するかはタバコシバンムシが「指標」になる。
成虫、幼虫/若虫、卵のいずれでも無酸素下でタバコシバンムシがもっとも長く生存する。成虫は約120 時間、幼虫/若虫は約144時間、卵は約192時間。無酸素下でこの時間が経過すれば致死する。また、タバコシバンムシ以外の害虫の成虫、幼虫/若虫、卵は、これらの時間以下で致死する。したがって、封印して無酸素環境が形成されたと確認されてから10日間放置すれば、これらの害虫は駆除できることになる。
2015年03月23日(月) 内外ニュース&レポート編:世界の図書館・アーカイブズはカビ対策をどのように行っているか? —— 国際的な調査結果まとまる
図書や文書等紙資料のカビによる劣化と対策は図書館、アーカイブズ、博物館等の資料保存機関にとって常に大きな関心事である。このほど、20ヶ国、57名のコンサーバター(保存修復専門家)や保存科学者等を対象に行なったアンケート調査の結果が発表された。回答者の大半が公的な機関の職員。これまで各国あるいは各機関ではそれぞれ独自のガイドラインにより対策が行われてきたが、今回のように統一したアンケート項目により国や機関をまたいで行われた調査は初。Fungal Biodeterioration of Paper: How are Paper and Book Conservators Dealing with it? An International Survey. として専門誌 Restaurator: International Journal for the Preservation of Library and Archival Materialに掲載された(2014, 35-2)。著者らはポルトガルの保存科学者。
それによると、カビによる劣化は世界共通で、劣化の予防や拡大を阻止するための何らかの対策を講じており、また薬剤等を用いた滅菌処置を行った経験のある機関が大半を占める。また、予防策としては保管や展示環境の制御が主として行われている。すでにカビの被害を受けた資料には乾燥処置が優先され、拡大を食い止める処置としては70%エタノール液の噴霧等を採用している。しかし現在実施されている方法には充分とはいいがたく、資料にも人にも安全で効果的な方法の研究や開発が喫緊の課題としている。
この調査はWeb上のGoogle Drive®に置かれた14の質問項目にインターネットを通して応えてもらう方法で実施された。予防、被害の要因と滅菌等の処置管理、被害を受けた資料への対処法、そして課題と要望に関するものである。アンケート対象者は、定評あるメーリングリスト Conservation Distlistの参加メンバーのうち紙媒体関連として登録している1034名のコンサーバターや保存科学者、図書館員やアーキビスト等である。20ヶ国、57名から解答を得た。68%が公的機関に属し、10-20年の勤続経験者が42%を占める。
予防
「何らかの予防対策を講じている」のは90%、「燻蒸等の積極的な(active)な処置をしたことがある」が79%、「一度処置をした資料を収蔵庫に戻したあとに再びカビが活性化したことがあるか」は「無い」が79%だが「ある」も20%を占める。また、予防対策としては「温湿度管理」(77%)、「換気システムの導入」(60%)、「エアーフィルタリング」(37%)の順。
カビ被害の発生要因
「漏水」(35%)、「保管の少環境対策の不備」(30%)、「外気変動に連動した温湿度変化」(26%)、「温湿度管理システムの故障」(25%)、「洪水」(25%)の順。「その他」(25%)で特筆されるのは「汚染された資料のカビが換気システムにより拡散し他の資料にも被害を及ぼした」という解答である。
カビ被害制御と不活性化
ひとたびカビの被害を被った場合の対処法は表4のように「設備を用いて屋内相対湿度を低下させ乾燥」、「文書や書籍への間紙挿入、吸収、交換」、「凍結乾燥」、70%エタノール溶液での噴霧等。ガンマ線殺菌は1割、エチレンオキサイドによる燻蒸滅菌はほとんど行われていない。
カビで汚れた資料のクリーニングは、エタノール殺菌と併行してブラシやスポンジによる拭き取りや真空吸引等が採用されているが、汚染された部位だけでなく全体にカビを広げるリスクや、エタノールで溶解する色材への影響などが指摘されている。また。カビの被害を受けた部位は総じて紙力の低下や破損が認められるが、修理法は和紙に、でんぷん糊やメチルセルロースやクルーセルGなどどの組み合わせでの補修処置を70%以上が採用しており、ゼラチンやメチルセルロース、クルーセルGによる全面サイジングも20%ぐらい採用している。なおカビにより着色された部分の漂白等による除去は、展示が必要などの場合を除き、ほとんど行われない。
今後の研究開発の課題
予め4つの選択肢として「無毒性/安全な防菌・抗菌法」、「カビ汚れの効果的な除去」、「生物としてのカビの排泄物の紙への影響」、「カビで物理的に傷んだ紙の安定化と強化」が用意され、課題としての重要度を1〜5のレベル(5が最高)で答えてもらった。「無毒性〜」が最も高くレベル5で67%、レベル4ではカビによるシミなど汚れの除去(40%)で、「排泄物〜」がレベル3と4の半数、「安定化〜」は各レベルで15〜20%となっている。
2015年03月18日(水) 修理の各工程で使う水にはこれだけの質が要求されます
RO(逆浸透膜)水装置の定期点検の日。専門業者の方による装置内のフィルター交換と水質点検が行われた。弊社では、紙資料の修理に使う水をすべてこのRO(逆浸透膜)水装置で作っている。不純物(重金属類、トリハロメタン、ヒ素など)が入った水道水をそのまま使用すると、化学的な試験や処置の結果が正しく判断できなかったり、微量の重金属が’後々になって変色等の原因になることもある。水道水を装置内の逆浸透膜と活性炭フィルターに通し、水の中に溶けている不純物を分子レベルで分離・除去して限りなく H2Oに近い水(下表の精製RO水)にする。そしてこのRO水を元に、洗浄、脱酸性化、フラットニングなど、それぞれの処置と目的に合わせて水質を調整している。
作業工程 | 要求される水(これ以上の質ならば問題ない) |
洗浄、霧吹き、サクション | イオン交換水、作ってすぐの滅菌/精製RO水、蒸留水:もしアルカリに敏感なものがなかったらアルカリ水(200ppm 炭酸水素カルシウムかマグネシウム水溶液)がよい |
普通のpH 計測 | 作ってすぐの精製RO水 |
水性脱酸用の溶媒 | 作ってすぐの精製RO水 |
漂白 | 精製水 |
酵素を使う処置 | 作ってすぐの精製RO水 |
水溶性接着剤の溶媒、湿布 | 精製水または蒸留水 |
リーフキャスティング、紙漉き | DI(脱イオン水)、RO、蒸留水 |
特殊なイオン分析(pH、マグネシウム、カルシウム、塩素) | 精製水 |
ガラス器材の洗浄 | 水道水の後の仕上げに蒸留水かRO水か精製RO水 |
金属器材の洗浄 | RO水もしくは精製RO水 |
補彩などの絵の具の溶媒 | RO水もしくは精製RO水 |
参考:CCI(カナダ文化財研究所)Water Quality for Treatment of Paper and Textiles
2015年03月16日(月) 内外ニュース&レポート編:デジタル化や修理のための状態調査 — 400点サンプル抽出法
資料所蔵機関がかけられる資源(ヒト、カネ、モノ)には限りがある。資料保存に振り分けられる資源も、他の分野同様に適切に配分され、無駄がないように使われなければならない。
雑誌のような逐次刊行物を合冊製本する際にも、すべての雑誌が対象になるわけではない。利用頻度が高いものは優先されるだろうし、利用頻度が低いものは対象にはならず、すでに内外でデジタル化されている雑誌ならば、冊子のまま紐でくるんでバラバラにならないように保管しておくだけかもしれない。また、貴重なものが少量ならば、優先的にデジタル化したり修理計画に組み込んだり、予算の手当も容易かもしれない。
このように「簡単」な選別基準で対象物を抽出できるが、特定の図書資料群(コレクション)や特定の文書(アーカイブズ)資料群として数千点、数万点とある場合には、このうちどのぐらいの数が傷みがひどくデジタル化による代替が必要なのか、保存容器への収納資料の数は、修理対象資料の数は—等々を事前に調査するためには、調査法に統計学的な信頼性がなければならない。また、デジタル化等の保存のための計画立案は当然予算の裏付けが必要だが、どのぐらい費用がかるのかを予測するためには、前提として事前調査による全体像の把握が必須となる。
以下では Carl Drott の良く知られた論文をもとに、事前調査に使うランダムサンプリング法を紹介する。統計学的な手法を使った調査法に関する文献はたくさんあるが、Drott の論文は表題通り、図書館で使うことに的を絞ったもので評価が高く、海外では広く用いられている。英国の National Preservation Office は、この方法で、図書、文書はもちろん、博物館などモノ資料にまで調査できるとし、2000年から開始した国内の図書館・アーカイブ・博物館・美術館を網羅する資料保存アセスメント(PAS)では400点調査を推奨している。また、後述のように国内での事例もある。
この手法のポイントは、抽出を適切に行えば、全体数がどれほど多くとも、実際のサンプル数を400足らず(正確には 384 だが、切りのよいところで400にする)にできることだ。この数からのデータを全体に敷衍したとき、統計学的には95±5 % の高い確率で当てはめられることになる。さらに読む→
2015年03月12日(木) 年度末でバインダーやファイルボックスなど定形品のご注文が増えています
おかげさまで、弊社は今年も繁忙期を迎えています。例年に比べ、アーカイバルバインダーやファイルボックスR、無酸素パックモルデナイベ®など定型品の御注文を非常に多く頂き、急きょ増産することになりました。ちなみに昨年は長さが1mほどの大型組立式被せ箱の「当たり年」でしたが、不思議なことに、その年によってよく出る商品が全く違うのです。なかなか予測できないのが残念ですが、それがまた楽しみでもあります。
2015年03月04日(水) 個人様の漢和字典の修理。尋常小学校時代から今までずっと大切に使ってこられた。
個人のお客様からお預かりした漢和字典。所蔵者様が尋常小学校に通っていた時から戦後を経て今に至るまで、大切に使ってこられたとのこと。本紙の破れは和紙で補修し、綴じ糸が切れている箇所は糸で綴じ直した。綴じの支持体には薄いが丈夫な不活性不織布を採用した。外れた表紙も染色した和紙で補修して本体と再接合し、再び字典としてお使い頂けるようになった。弊社は個人のお客様からのご要望も承っております。どうぞお気軽にご相談ください。サービス提供の流れはこちらから。
2015年02月25日(水) 新仕様のガラス乾板保存箱を開発、保護性はそのままに価格を大幅ダウン
ガラス乾板用保存箱を全面的に見直し、保護性はそのままに価格を40〜50%ダウンした新製品を開発しました。従来品は完成箱として提供してまいりましたが、新製品はお客様に組み立てていただく仕様です。従来品同様、国際規格ISO 18918:2000に規定されている「乾板の長辺を底にして、垂直に立てて収納する」保管方法に準拠しています。乾板は画像層を保護するため、1枚ごとに専用のフォルダーに包みます。乾板定型サイズの4×5インチ、5×7インチ向けの箱が定番ですが、これ以外のサイズに合わせても設計いたします。ご覧のように異なるサイズの乾板を1つの箱に部屋分けをして収納する設計もできますので、ご相談下さい。
2015年02月19日(木)大船渡で被災したアルバムの復旧に尽力してきた金野さんが工房に。元の持ち主への返却率は90%
紙本・書籍修復家の金野聡子さんが来社された。金野さんはコンサーバター養成機関である英国Camberwell College of Artsでアート・オン・ペーパーのコンサベーションを学び、地元の大船渡市で紙本・書籍保存修復の仕事をしておられる。2011年の東日本大震災では、民間の被災写真やアルバムの復旧に尽力され、弊社と東京地区の図書館員やアーキビストが協力して立ち上げたボランティアグループ東京文書救援隊の被災資料復旧システムをいち早く導入し、活用して下さった。今回は、大船渡市でお会いして以来の再会となった。現在も被災資料の復旧作業は継続中で、処置後、所在不明の資料の90%が、大船渡市の社会福祉協議会を通して持ち主のもとに返却されているとのことで、返却率の高さに金野さんらの活動に対する市民の方々の関心の高さを感じる。金野さんの活動を記録した『思い出をレスキューせよ:“記憶をつなぐ”被災地の紙本・書籍保存修復士 』(堀部薫著、くもん出版 2014)も。金野さんのブログはこちら。
2015年02月13日(金) 読売新聞社様が所蔵する新聞合冊製本の保存容器を観音開きに
読売新聞社様が所蔵する新聞の合冊製本を対象に、株式会社ニチマイ様、日本ファイリング株式会社様、弊社の3社で悉皆調査、脱酸性化処置、保存容器の作製、収納を2008年から行ってきた(「新聞合冊製本の保存事例―読売新聞社様の導入事例―」)。今回、担当者様から、調査業務など資料を出し入れする機会が多く、容器の扉をより開けやすくするよう要望があった。検討の結果、上下開きから観音開きに改良することで、資料の出し入れがいっそう楽にできるようになったと好評価をいただいた。
2015年01月30日(金) The University of the Philippines Diliman college of musicのJosephine Baradasさんが国立音楽大学附属図書館の方々と共に弊社を見学
The University of the Philippines Diliman college of musicのJosephine Baradasさんが国立音楽大学附属図書館の方々と共に弊社を訪れ、修理部門とアーカイバル容器作成の現場を見学された。20世紀初頭のフィリピンの作曲家の自筆楽譜の修理と保存の具体的なことを知りたいということで、特に基本的な補修技術、使用する材料、そして容器のバリエーション等に興味を持たれ、熱心な質問が相次いだ。
2015年01月26日(月) 没食子インクによるインク焼け破損箇所修補のため、極薄の補修紙を作成する
没食子インクによるインク焼けの破損箇所を修補するため、極薄の補修紙を作成する。インク焼けを部分的に処置する場合、水分を多く含む接着剤を用いると、没食子インクの劣化要因である鉄イオンや有害な酸化合物を拡散させる危険性があるため、なるべく水分を用いない方法で行う。まずポリエステルフィルムの上にテープで型を作り、ヒドロキシプロピルセルロース溶液を塗布し、均一になるようガラス板でならす。和紙を被せて乾燥させた後、テープごと持ち上げることで薄い和紙でも破れずにはがすことができる。処置の際は、破損箇所に補修紙を当て、溶剤(イソプロピルアルコールなど)で再反応を促しながらスパチュラで押さえて接着する。
2015年01月15日(木) 東京信用保証協会発行の情報誌「T.G.Press」に弊社の記事が掲載
昨年、東京信用保証協会主催の「江戸・TOKYO技とテクノの融合展」に出展したことがきっかけとなり、この度、同協会発行の情報誌「T.G.Press」に弊社が取り上げられることになりました。アーカイバル容器製作や修理作業といった資料保存への取り組みを紹介していただく予定です。掲載は春ごろの予定です。
2015年01月05日(月) 新年のご挨拶
謹んで新年のご挨拶を申しあげます。旧年中は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申しあげます。当社も心新たに新年をスタートさせることができました。本年も相変わりませず、ご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。
2014年12月18日(木) 襖絵を収納する保存箱
襖絵を収納する被せ箱。襖の縁の幅に合わせたスペーサーの板を、箱の底と天井に取り付けた。襖の縁部分のみがスペーサーに触れる構造のため、描画面は箱の内面に接触しない。収納後は箱を紐で縛り、立てて保管する。
2014年12月2日(火) カナダ、メキシコ国立公文書館の修復担当者が東京文化財研究所 近代文化遺産研究室の中山様、小林様と共に来訪
東京文化財研究所主催「第28回近代の文化遺産の保存修復に関する研究会-洋紙の保存と修復-」でご講演されたアン・フランセス・マヒューさん(カナダ国立図書館・公文書館 紙修復部門責任者)とアレハンドラ・オドア・チャヴェスさん(メキシコ国立公文書館 修復部門長)が東京文化財研究所 近代文化遺産研究室の中山様、小林様と共に弊社を訪れた。2時間たっぷり、カナダ、メキシコの近現代紙資料に対する保存の方策や考え方についてお話を伺うことができ充実した交流の機会となった。また弊社が海外の知見を学ぶと同時に、技術・製品の開発に積極的に活かしている点や細かな配慮がされた様々な保存容器にも大きな関心を持って頂けた。アレハンドラさんが専門とされている没食子インクに関する劣化と保存修復に関する研究は、オランダやスロベニアを中心に海外では1980年代半ばから盛んに行われてきており、その成果はすでにコンサベーションの現場で確立された技術として実用化されている。弊社の実例もお目にかけ評価して頂けた。美術作品以上にさまざまなコンディションが予想されるアーカイブ資料を扱うために、今後もしっかりと内外の動向を捉えていく必要があると感じた。
2014年11月20日(木) 学習院大学大学院アーカイブズ学専攻の皆さんによる工房見学
工房見学にいらした学習院大学大学院アーカイブズ学専攻の皆さん。修理や保存容器の技術・工程・材料の話だけでなく、保存計画の中における弊社の役割から、方針が決まるまでにお客様と打合せる内容など、実際的な流れに沿った話や質問も多く大変充実した内容となった。毎年、熱意を持って資料保存に取り組んでいる方々が集まるこの見学会は、私たちにとっても貴重な意見が伺えるコミュニケーションの場として恒例行事となっている。