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週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。
2016年10月26日(水) 洋装本の表紙と背表紙の負担を軽減させるブック・シュー・スタンド(book shoe stand)の導入事例。
洋装本を本棚に縦置きで配架すると、表紙のヒンジ部分(表紙の開閉時の蝶番箇所)に本の本体(text block、本紙のブロック)の自重によるストレスが掛かるため、ヒンジ部に破れや外れなどの損傷が起きやすい。大型の本や、重量のある本、ヒンジ部の構造が脆弱なものは、とくに損傷を受けやすい。
対策として、本のチリ(本体と表紙の大きさの差)の厚み分のシュー(shoe、靴)をボードで作成し内蔵させたブック・スタンド(book stand)で本を支える。本の厚みにも合わせたスタンドのため、縦置き時に前小口が広がることもない。
このお客様の場合、この閲覧室の書棚は、「見せるための書棚」であるため、背表紙は見えるようにしておきたいが、ヒンジの損傷は防ぎたいので、箱でなくスタンドの導入となった。
参照:ブック・シュー内蔵の保存箱についてはこちら。
2016年10月19日(水) 大量の大型保存箱を遠方に送る。
倉庫いっぱいに積まれた大型箱を4トントラックに積み込む。積み方を間違えると全て載せきれないこともあるので確認しながら載せていく。最後の一つを入れると、荷崩れしないようトラックのドライバーさんが養生材でしっかり固定し、無事に出発。これほど大がかりな出荷は年に一度くらいだが、行先は遠く九州や北海道のこともある。お客様から着荷の連絡を受けると一安心だ。
2016年9月21日(水) 第18回ICA大会 2016 韓国・ソウルのブース展示に参加しました。
2016年9月5日~10日に韓国ソウル市で開催された、国際公文書館大会(International Congress on Archives)のブース展示に弊社も参加した。今大会は 「アーカイブズ、調和、友情: グローバル社会における文化的感受性、正義、連携の確保」をテーマに、世界中から参加したアーカイブズの専門家による基調講演やワークショップ、保存・修復に関わる公的機関や一般企業によるブース展示が行われた。大会のハイライト動画はこちらから。
弊社製品の韓国での現地取扱店となるDoosung Paper Co., Ltd.様の出展ブースにて弊社製品が多数展示され、日本国内から韓国への販売代理店となる株式会社竹尾様、保護紙の開発と販売を行っている株式会社TTトレーディング様各社ご担当者と共に弊社スタッフもブースに立ち、来場者への商品説明などを行った。ブースへは韓国内のみならず、中東やアフリカ、欧米諸国から参加された多くの方々にお立ち寄りいただいた。展示した保存箱には実物の資料を収納し、一目で用途や効果が分かるようにしたため、興味を持ち立ち止まり見学される来場者が多かった。来場者からは、汚染ガス吸着シートGasQ®︎と無酸素パックMoldenybe®︎の機能や効果についての質問が最も多く、他にはない高い機能性を持った商品であるとの評価を多数いただいた。
次回のICA大会は2020年、アラブ首長国連邦のアブダビにて開催の予定との事。
2016年9月14日(水) 映画の復元と保存ワークショップに参加、フィルム保存用のベントボックスなど好評でした。
8月26日から28日まで3日間の日程で 「第11回映画の復元と保存に関するワークショップ」が開催された。初日は各所の施設見学や実作業体験、2.3日目は株式会社IMAGICA東京映像センター第一試写室で講義やトークセッションが行われ、弊社は協賛企業として機器展示とライトニングトークで発表をさせていただいた。
施設見学・実作業では、株式会社東京光音主催による「被災した視聴覚資料の応急処置」と株式会社東京現像所主催の「調布の映画関連施設見学」に参加させていただいた。
「被災した視聴覚資料の応急処置」では株式会社吉岡映像、富士フイルム株式会社、コガタ社の各専門家より8mmフィルムやビデオテープ、SPレコードの実物を使い水洗洗浄やカートリッジを分解してのクリーニングなどを実習、実際に東日本震災で水損した映像資料の救済処置の内容をもとにした実践的な内容だった。
「調布の映画関連施設の見学」では映像資料や書籍、文書などを最適な環境で保管する共進倉庫株式会社のフィルム用低温収蔵庫を見学させていただいた。慣らし室にはIPIの基準に基づいて慣らし時間が細かく設定されており、奥の低温収蔵庫は摂氏5度40%Rhの中に約10万本ものフィルムが保管されている。次に映画など劇中に使用する小道具のレンタルを手掛ける高津映画装飾株式会社では鎧専用の倉庫と現代劇と時代劇用の小道具が収められた2つの倉庫と、過去の著名な映画に使用された貴重な小道具が展示された芸能美術文庫PALにも案内していただいた。最後に株式会社角川大映スタジオでは、映画、TV、CMの撮影から映像作品になるまでの各作業所を見学した。
機器展示の当社ブースでは汚染ガス吸着シートGasQ®を使った映像フィルム、SPレコード、磁気テープ、CD/DVDやLTOといった新旧の視聴覚メディア用保存箱や、衣装などを安全に保存するための無酸素パックモルデナイベ®を展示した。中でもフィルム用保存箱ベントボックスが好評で、来場者からは従来のフィルム用容器との比較、機能、価格や生産ロットなど具体的な質問を多くいただき、映像フィルムの保存への関心の高さを感じた。ライトニングトークでは、具体的な事例を交えながら視聴覚メディア専用の保存箱を紹介をさせていただいた。来場者の方々からは様々なご意見やご感想を伺うことができた。お立ち寄りいただいた皆様に心より御礼申し上げたい。
2016年9月7日(水) 保存容器に貼付する中性ラベル
アーカイバル容器のオプションの1つでもある中性ラベルのご紹介。資料を容器に収納すると、中にどんな資料が収納されているのかが判別できなくなるため、容器作成と併せてラベルの貼付をお勧めしています。ラベルの形式は様々で、お客様のご要望や容器の種類、資料の形態等に合わせてご提案しています。左の2枚の写真は、元箱の識別情報を整理した上でラベルを作成し、保存容器に貼付した例。
また、最近ご好評なのは、洋装本を収納した際の「パネル型」のラベルです。洋装本の背のタイトルパネルに倣ってラベルを作成し、保存容器に貼付しています。この形式は立教大学図書館様の洋書貴重書の保存容器にも採用されています。
2016年9月2日(金) 大容量磁気テープ媒体 LTO用の専用保存容器を開発
テレビ番組などの大容量コンテンツの保管と保存用の最適媒体として急速に普及が進んでいる磁気テープ LTO(Lenear Tape Open)専用の容器を商品化しました。これまで放送局様などからの様々なご要望を受け開発に取り組んできましたが、ようやくご納得いただける製品ができたと自負しております。
磁気テープの劣化要因には、落下によるカートリッジの破損、温湿度の急激な変化、埃や粉塵、水(湿気)、 空気中の腐食ガスなどがある。湿気からくるカビの発生はよく知られているが、腐食ガスによる影響も大きい。 高温高湿の環境や腐食ガスは磁気テープの記録層を構成するメタル磁性体を酸化させる。 磁性体は酸化すると抗磁力が落ち、記録された情報の欠損を起こす。 これらの要因への対策は磁気テープの保存にとって重要である。
画像はLTO4本収納用と、 10本収納用保存箱。蓋は樹脂製のヒネリ留め具やボアテープで固定ができ、持ち運びの際に不用意に蓋が開かないようになっている。10本用の保存箱には局内での持ち運び用に樹脂製の提げ手を取り付けた。 また、調湿性を付与するため外側を防湿効果のある不活性フィルムでコートし、内側には腐食ガスを吸着する汚染ガス吸着シートGasQ®を組み込んだ仕様になっている。
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ゲームソフトのフロッピー、テープ、CDを保存するには
2016年8月24日(水) 虫損がひどい資料へのリーフキャスティング(漉き填め)による修理
和紙基材の資料に見られる代表的な損傷に、シバンムシや紙魚(シミ)などによる虫喰い=虫損がある。ひどいものになると文字の判読はもちろん、丁をめくることも難しい。無理に開けば紙片が絡まって破損したり、島抜けになって文字が欠落してしまったり、そもそも、固着した虫糞によってページがくっついて開かない、ということもよくある。これらを、安心して取り扱えるように修理する。
まず、本紙を一丁ずつに解体しドライ・クリーニングする。無理に開いたりせず、島抜けしそうな箇所については、あらかじめ和紙で養生補強して、欠落しないように紙片同士をつないでおいた方が、この後の工程を安全に進めることができる。ドライ・クリーニングは、表面のチリやホコリ、泥よごれやカビを払うだけでなく、こびりついた黒い虫糞を除去することがポイントである。黒い虫糞が残ると、文字が読みづらくなるなど仕上がりを左右するため、除去には時間はかかるが丁寧に行う。
そして、サクション(吸い込み)型のリーフキャスティングで、紙の繊維分散液を充填していく。溜め漉きに、流し漉きの動作を組み合わせた独自のキャスターにより、和紙の繊維を絡ませながら欠損部にしっかり埋め込む。紙の厚みや虫損の多さなど、その都度本紙の性質を見て液量を決めるため、一見システマチックな工程に見えても、作業者には経験と、的確で素早い判断が求められる。
2016年8月17日(水)「映画の復元と保存ワークショップ」で具体的な事例を紹介します。
8月26日から8月28日まで、「第11回映画の復元と保存に関するワークショップ」が開催されます。1日目は各所での施設見学や実作業体験、2・3日目はIMAGICA 東京映像センター第一試写室を会場に、講義やトークセッションが行われます。
弊社は協賛企業として機器展示を行います。ブースでは、本イベントのテーマに沿って、映画フィルムや古いビデオ、音声テープ、磁気ディスク、レコード等のアナログ視聴覚資料専用のアーカイバル容器のほか、無酸素パック「モルデナイベ ® 」を利用したフィルムの冷凍保存に特化した収納キット等を展示します。見た目からは分からない様々な機能を備えた実際の製品に触れて頂く事ができますので、是非お立ち寄り下さい。
また、イベントの名物ともなっている「ライトニングトーク」では、汚染ガス吸着シート「GasQガスキュウ®」の紹介のほか、視聴覚資料をどのように整理し、保管ではない「保存」に向けてどのようにケアしていくのか、弊社によるお客様での具体的な事例を交えながら紹介します。
関連情報
◆ 『今日の工房』 2016年7月13日(水) SPレコードを保存するには。
◆ 『今日の工房』 2016年3月9日(水) ゲームソフトのフロッピー、テープ、CDを保存するには。
◆ 『今日の工房』 2016年2月24日(水) 映像フィルムの劣化要因「ビネガーシンドローム」と、劣化の進行を低減できる保存容器。
2016年8月3日(水) 無酸素パック「モルデナイベ」は工房でも加湿や修理用の材料の保管などに活用しています。
薬剤を使わずに防カビ・殺虫ができる無酸素パック「モルデナイベ」。カビや虫が発生した時だけでなく、図書館・アーカイブズ・資料館・美術館・博物館様での書籍や文書、博物資料や美術品などのモノ資料の新規受け入れ時にも活用して頂いております。また処置対象の数量にあわせて、1袋単位での小規模な処置にも、大型袋による大規模な処置にも対応できます。
画像は弊社の工房での使用例。左から、ホコリやカビが酷い和書を外箱の桐箱ごと無酸素パックして処置したり、超音波加湿器で加湿したガスバリア袋内の中で、劣化して乾燥が進んでいる革装丁本の柔軟性を戻したり、同じく巻きクセのついた資料を入れて、フラットニング(平坦化)するための加湿チャンバーとして使っています。また、修理用の皮革など、環境の変化や虫カビに弱い材料を収納しておくためにも使っています。
2016年7月27日(水)組み立て式の作業台、ぐらつかないための一工夫。
箱の製作や資料の修理を行う作業台。工房内だけでなく社外に持ち出すことも多いため、折り畳み式のウッドスタンドに板材を乗せる組立式のものを使用している。こうした作業台は固定机に比べると脚が揺らぎやすくなってしまうが、弊社ではウッドスタンドに三角形の補強材を取り付けることによりこれを解消した。作業内容にあわせて自由にレイアウトできる手軽さと安定感とを両立させた作業台は、毎日の仕事をしっかり支えてくれる縁の下の力持ちだ。
2016年7月20日(水)この夏の手ぬぐいの柄はオクラです
2016年7月13日(水) SPレコードを保存するには
SPレコードはLPレコードに比べて約3倍の重量があるため、縦置きで長期間保管すると熱による反りなどの変形を起こしたり、床に接触している部分が欠ける恐れがある。そのためSPレコードは平置きで保管するのが望ましい。(LP盤は縦置きの保管も可能だが、反りが起こらないように硬めのボードで挟むなどの工夫が必要だ。)
写真にある元のレコードスリーブは酸性紙で作られているので、アルカリバッファーの中性紙封筒に入れ替えた。保存箱にはレコードを平置きで10枚収納できる。フタがボアテープで固定されているため、持ち運びの際にレコードの重みで箱の身が不用意に開かないようになっている。
オリジナルのレコードジャケットも保存の対象である場合は汚染ガス吸着シート「GasQ ガスキュウ」で包み、中性紙封筒に入れたレコードと同じ保存箱に収納して保管する。
参考:SPレコードとLPレコード
SP(Standard Playing)レコードとは、1897年~1950年代後半に製造されていたレコードで、1948年に長時間の記録が可能なLP(Long Playing)レコードの販売が始まり徐々に移行していった。SP盤とLP盤の違いは以下の通りである。
SPレコード
・直径:12インチ(30cm)と10インチ(25cm)
・毎分78回転、記録時間:最大片面5分
・主原料:シェラック(東南アジアに生息するラックカイガラムシが分泌する天然樹脂)
・材質:硬度がある半面、弾力が無くもろい。摩耗しやすく、落とすと瓦の様に割れる
・重量:最大400g程度
・シェラックは粒子が粗いので長時間の記録ができない(細かい溝を掘れない)
LPレコード
・直径:12インチ(30cm)と10インチ(25cm)
・毎分33と1/3回転、記録時間:最大片面35分
・主原料:硬質塩化ビニール
・材質:弾性があり割れにくく丈夫
・重量:130g程度(重量盤は180g)
・粒子が細かいので細密な記録が可能になり、SP盤では不可能な長時間記録を実現
日本では、明治末期からSPレコードの製造が始まった。戦中戦後の物資が不足した時代には、シェラックの輸入が止まり、代替材料を使用した物や、A面とB面の間にボール紙を挟み込んだ、劣悪な素材のレコードが製造されていた。1951年にLPレコードの輸入が始まり、SPレコードの国内生産は1963年に終了した。SP盤からLP盤への過渡期にはフェノール樹脂や塩化ビニールのSPレコードも製造されていた。
2016年7月6日(水) 修理の第一歩はカルテの作成、時間をかけて丁寧に。
修理にとりかかる前に事前調査を行いカルテを作成する。資料の形態(和装本、洋装本、図面、小冊子等)、基材(和紙、パルプ紙、洋紙等)、イメージ材料(墨、顔料、スタンプ、インク等)、資料の劣化状況(破れ、欠損、虫損、カビ、粘着テープ、金属物等)などを観察しカルテに記す。さらに、pHチェックやスポットテストを行うことで、より詳細に資料の性質を把握する。これらの調査結果を受けて、時には想定していた修理方針を修正する場合もあるため、時間はかかるが丁寧に行わねばならない非常に重要な工程である。また、処置に使用した材料(和紙、接着剤、溶剤)や工程、処置後に収納した保存容器の形態、かかった作業時間を記録しておくことで、同じような資料に対して、より適確な処置を施すための判断材料にもなる。さらに処置を行った資料そのものにとっても、将来的にさらに修理や保存対策が必要になった際、重要な情報源となる。
2016年6月29日(水) 明治期の英訳「舌切り雀」の和装本を修理しました。
日本昔話『雀の物語(舌切り雀)』 を海外向けに英訳し出版(明治22年)された本。英文のため左開きではあるが、本紙は袋綴じで角裂が付いていた跡があり、和装本の形態である。本紙の袋内には間紙が挟まれており、共に基材はパルプ紙である。
間紙は枯葉のようにパリパリの酸性紙と化し、紙力は残っておらず折り曲げると切れてしまうような状態に劣化している。本紙と比べても茶褐色化が著しい。
本来間紙は、薄い本紙を袋綴じする際に、間に一枚紙を入れて綴じ込むことで、薄い紙への印刷の裏抜けを覆い、読みやすくするために用いられる。今回の資料は、本紙はパルプ紙で厚みがあり、今後も裏抜けの心配はないため、処置するにあたり間紙はすべて除去し、損傷箇所の修補をした後、綴じ直した。
2016年6月22日(水) 第38回文化財の虫菌害・保存対策研修会に出展しました
6月16日、17日の2日間。国立オリンピックセンターにて、公益財団法人文化財虫菌害研究所主催 第38回文化財の虫菌害・保存対策研修会が開催されました。研修会には「文化財IPMコーディネーター」の有資格者や資格更新者、取得希望者、文化財を保存管理する一般市民や 博物館、美術館等の担当者など160名を超える方々が参加されました。
弊社は文化財の保存管理に役に立つ「無酸素パックMoldenybeモルデナイベ」、「汚染ガス吸着シートGasQ®ガスキュウ」、カビの残滓除去が館内でできる「簡易・ドライクリーニングボックス」を展示しました。ご来場いただいたお客様は資料保存や害虫防除にとても熱心な方が多く、様々なご意見やご感想を伺うことができ大変参考になりました。お立ち寄りいただいた皆様に心より御礼申し上げます。
2016年6月15日(水) 明治新聞雑誌文庫様所蔵の屏風の下張りに使用されていた新聞への保存修復手当て
東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター 明治新聞雑誌文庫様よりお預かりした屏風の下張り新聞。前回までの作業はこちら。下張りから新聞を取り出したところ、新聞同士が重なる箇所はデンプン糊でしっかりと接着されていることが分かった。これらを安全に分離させるため、一度温水に浸漬してデンプン糊を緩ませてから、1枚ずつ慎重に剥がした。
その後、刷毛で溶液をかけ流す方法で洗浄と水性脱酸性化処置を行った。水性処置によって、若干の紙力回復効果は確認されたが、取り扱いが可能なレベルとまではいかないものもあった。そこで一部の資料に対しては、和紙で裏打ち、もしくは両面から挟んで補強を行った。この処置では、全面的に和紙で文字を覆うことになるので、閲覧時の読みにくさを出来るだけ軽減するために、極薄の和紙を採用した(画像2段目左から裏打ち前、裏打ち後)。処置が完了した新聞は保存容器に収納し、明治新聞雑誌文庫様へ無事に返却された。
今回、下張りから解体した新聞(明治37年〜39年発行)は総数40枚ほどで、そのうち、修理を行うきっかけとなった「讃岐日日新聞」については23枚見つかった。この新聞は、国内に数日分・数枚の現存しか確認されていないという、大変貴重かつ稀少な資料であり、今後マイクロフィルム化等による複製物の活用が検討されている。
関連情報
白石慈『特集:新聞を読む 明治への窓、その向こう』びぶろす71号、2016、国立国会図書館総務部
2016年6月8日(水)スチール製キャビネットの引き出し専用収納箱を東京文化財研究所に
東京文化財研究所 企画情報部様からのご依頼を受け、スチール製キャビネットの引き出し専用の収納箱を作成した。既存のプラスチック製仕切り板は、資料の荷重によって湾曲し、出し入れがしづらい状態だった。そこで、箱の内寸に対し仕切り板の幅を大きくとり、スリットに差し込む時に外れにくく、資料がよりかかってもしっかりと支えられる構造にした。既存の引き出しの奥行きや幅に合わせて設計されているため、スペースを有効に使えるようになり、また検索しやすくなったことで出し入れも安全に行えるようなった。
2016年6月1日(水)「GameOn ゲームをどう残すか」フォーラムに参加しました。
日本科学未来館と株式会社角川アスキー総合研究所は2016年5月20日、企画展「GAME ON」の特別フォーラムとして「ゲームをどう残すか〜技術と体験のアーカイブ」を開催した。フォーラムでは、ゲームアーカイブに携わる講演者の取り組みの紹介、ゲームや周辺文化の保存を巡る社会的意義についてなど、ゲームを「なぜ残すか」という点を中心に幅広い話題を取り上げた中身の濃い議論が交わされた。プログラム概要は以下のとおり。
[司会]
遠藤諭(株式会社角川アスキー総合研究所)
今泉真緒(日本科学未来館)
[講演者]
■第1部 プレゼンテーション どう残すか -ゲームアーカイブの現状と課題-
「MANGAナショナル・センターの構想とは?」 桶田大介(弁護士/マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟アドバイザー)
「CiP | Contents Innovation Programの紹介」 中村伊知哉(慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授/CiP協議会 理事長)
「日本ゲーム博物館について」 辻哲朗(日本ゲーム博物館 館長)
「ゲーム資料保存の未来」 ルドン・ジョゼフ(NPO法人ゲーム保存協会 理事長)
「立命館大学のゲーム研究について」 細井浩一(立命館大学 映像学部/ゲーム研究センター 教授)
「文化資源アーカイブとしてのゲームアーカイブの位置付け」 柳与志夫(東京大学大学院情報学環 特任教授)
■第2部 ディスカッション なぜ残すか〜ビジョンの共有〜
-日本におけるゲームアーカイブの現状と課題-
現状:
現在の日本では、さまざまな立場の人が、個々の機関、分野ごとにアーカイブへのアプローチをしており、その取り組み状況にもばらつきがある。またそれらの連携が不十分であるため、一元的に保存・活用できるような環境整備が必要とされている。そうした状況のなかで、「MANGA(Manga, ANimation and GAme)ナショナルセンター構想」を始め、中核的なアーカイブ事業も進みつつあるが、その中でもゲームアーカイブが最も立ち遅れており、なかなか果が行かない状況とのことであった。
課題:
ゲームはマンガやアニメーションとならんで現代のポップカルチャーを代表するコンテンツであり、世界に誇れる日本の文化のひとつであるのは確実だが、それを支える制度・政策が存在せず、その文化を様々な形で支える基盤が成り立っていない。国や行政、大学、民間企業やゲーム企業、個人、各々が継続性や網羅性について課題を抱えているなど、いろいろなレベルの大小さまざまな課題が提示された。併せて、アーカイブに関わる技術的課題の他に、「文化資源」として「公共的」に残すという取り組みへの課題も示された。
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2016年5月25日(水) 平綴じされた機械パルプ紙製の小冊子やノートのヒンジ部破損の修理
機械パルプ紙製の小冊子や大学ノートなどによく見られる表紙ヒンジ部の損傷。ヒンジ部とは、冊子の表紙の開閉時の「ちょうつがい」になる部分。酸化と酸性劣化により紙の耐折強度が低下している機械パルプ紙の資料の場合、同じ位置で強制的に折られる表紙ヒンジ部は、真っ先に破断などの損傷が起きる。閲覧利用の際や、デジタル化撮影の際、あるいは冊子を開いた状態で展示する際などに、何度か冊子を開け閉めしていると、気が付いたら表紙がヒンジ部で切れてしまった、と言ったご相談もあります。
今回取り上げている小冊子は、本体は針金による平綴じで、表紙が本体の綴じ代で糊付けされ、それによりできた綴じ代の内側のヒンジ部に負担が集中して破れが起きている。修理方法の一つとして、表紙のちょうつがいの位置を移動し、冊子の開閉時に表紙が折れない構造にする処置がある。処置工程は、冊子の金属留め具を除去して表紙と本体を解体し、破れている箇所を和紙とでんぷん糊で修補する。表紙以外の本体を糸で綴じ直し、表紙は本体の綴じ代に糊付けしない。(平綴じでなく、かがり綴じでの綴じ直しができるのであれば、かがり綴じの方がさらに負担が少なくて良い。)これにより、表紙のヒンジ部は背表紙の表紙側の角に移った。
表紙と本体の接合方法については、資料によって様々であるため、各資料に合わせて十分な接合が確保できるような構造にする。
2016年5月18日(水)ラベルを定位置にきれいに貼るための簡単な治具
保存容器などにラベルを貼る際は、「蓋の中央」「下から1cm」というように、位置を正確に決めて貼りたい。特に複数の容器に貼る際には、並べた時にラベルの位置が揃っていると、見た目もきれいである。とはいえ、貼るたびに定規を当てて印をつけて、というのも面倒なもの。そんな時は専用の治具を作ると便利である。治具は、大きさの違う板紙を2枚貼り合わせたもので、裏面にくる段差を箱の縁にあてて使う。シンプルで使い勝手が良く、簡単に作ることができるので、ラベル貼りにお困りの方はぜひお試しください。
【例:端から1cmのところにラベルを貼るための治具】
○材料
・硬い板紙 または アクリル板
・両面テープ または のり
○作り方
① 板紙から扱いやすい大きさの四角形を2つ切り出す。片方の一辺は1cm短くする。
(例)4×4cmと4×3cm
② 両面テープで貼り合わせる。
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