今日の工房 サブメニュー
今日の工房
週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。
2017年11月8日(水)11月7日(火)から9日(木)まで、パシフィコ横浜で行われている「第19回図書館総合展」に出展しています。
第19回図書館総合展が開催されています。期日は明日11月9日(木)まで。
今年は、修理部門の作業風景をブース内に再現し、処置で実際に使われている道具や材料をご覧頂けるようになっています。資料サンプルや事例を交えて修理方法、費用、期間のほかサービスや製品について具体的に解説いたしますので、ぜひお気軽にスタッフまでお声をおかけください。アーカイバル容器部門では無酸素パック「Moldenybeモルデナイベ®」、汚染ガス吸着シート「GasQガスキュウ®」、「ドライクリーニング・ボックス」などのラインナップに加え、現在開発中の新製品や近日発売予定の「新薄葉紙Qluminくるみん」も参考出品しております。弊社ブースへお立ち寄りのうえ、どうぞお手にとってご覧下さい。
ブース番号46にて皆様をお待ちしておりますので、ぜひご来場下さい。
2017年10月25日(水) 年始あいさつ用の手拭いのデザインはどれに?
今年も残すところあと2ヶ月となりました。これから年末に向けて徐々に慌ただしくなるこの時期、新年の準備も始まっています。日ごろお世話になっている方々へ年始にお配りする手ぬぐいのデザインを選ぶのもこの時期の仕事。毎年スタッフ全員の投票形式で決めています。来年は戌年ということで、犬柄のデザイン数種類の中から決めるのですが、どれも甲乙つけがたく、スタッフ一同あれこれ迷いながら一番良いと思うデザインに一票を投じました。さて、来年お正月の手ぬぐいはどんなデザインに決まるのでしょうか。
2017年10月18日(水)接着剤で無線綴じされた図録を折丁仕立てに作り直し、きれいに見開くように再製本する。
無線綴じされた図録。本紙の背を断裁し、それぞれのページを一枚ものにして束ね、背側の端を接着剤で固めて製本されている。経年により接着剤が劣化し、本紙は一枚ずつバラバラの状態に外れている。本紙が厚く柔軟でないため、そのまま糸で平綴じで修理を行うと見開きが悪くなり、紙への負荷もかかる。
断裁された本紙の背を短冊状の和紙でつなぎあわせて折丁の背を作り直した後、折丁を組み合わせた括を作り、糸で綴じ合わせてゆく(かがり綴じ)。手間のかかる工程であるが、これにより、のど元まできれいに見開ける仕上がりになる。
2017年10月11日(水) 資料のファイルと保存処置が同時にできるアーカイバル・バインダーの容量を拡大した改良品を開発中です。
アーカイバル・バインダーは透明のリフィルポケットに1枚物の紙資料などをファイルできる、リングバインダー付きのシェルボックスです。資料のファイリングと保存処置が同時にできるバインダーとして開発しました。透明リフィルに収納したまま中身の確認・閲覧ができるため、書類や原稿・印刷物・写真プリント・ネガフィルム・スライドなどの整理に便利です。また、資料の表裏を確認できるので、パンフレットやカタログなど薄い冊子のコレクションに利用するお客様もいらっしゃいます。
リフィルの素材は化学的に安定性の高いポリプロピレン製で、PAT(ISO18916:写真活性度試験)もパスしています。一般のビニール製品とは違い、素材に劣化要因となる可塑剤などの添加物は含みませんので、中の資料に安全です。
より沢山の資料を1箱に収納したいとのご要望をお客様から受け、バインダーのリングサイズを大きくした箱を試作中です。収納量が増えた分、中身の荷重に箱や部品が耐えられるよう、設計に改良を加えながら強度の検証を重ねています。販売開始までもうしばらくお時間をいただきますが、現行商品に比べ1.5倍程度の容量拡大が目標です。
2017年9月20日(水)本紙の破れを修補するときの道具・材料とセッティング
本紙の破れを修補するとき、デンプン糊を和紙に塗布、もしくは本紙に塗布して和紙を当てて補強する。デンプン糊は接着力が非常に強いので、水で薄めて使用するぐらいがちょうど良いが、薄すぎると和紙が剥がれたり輪染みになったり、濃すぎると紙がこわばる原因になる。
糊を塗布する際は筆や刷毛を使用する。修補の範囲によって、細筆、平筆、小刷毛、糊刷毛を使い分ける。このほか、糊が手や道具、作業台など余計なところに付かないよう注意し、もし付いたときにはさっと拭き取れるよう、濡らした布巾を用意しておく。
修補に使う和紙は、本紙の厚みや色、補強の程度によって選択する。喰い裂きの和紙は毛羽の影が目立つこともあるので、あえて断ち切りの和紙を使用することもある。冊子や新聞などの紙資料は、最初から最後のページまで同じ箇所が破れていることがよくあるので、このように同じ破損を一度にたくさん修補するときには、断ち切りした短冊状の和紙をあらかじめ用意しておく。
最後に、修補した箇所が不均一な乾燥によってシワになったり、つっぱったりしないよう、不織布とろ紙、更に重石をのせてしっかり乾燥させることが、良い仕上がりのためのポイントとなる。
関連情報
今日の工房 2017年1月18日(水)修理に欠かせな道具・材料ーリーフキャスティング(漉き嵌め)で使用する竹簾
2017年9月14日(木)松竹大谷図書館、映画関連記事スクラップの保存等で新たなクラウドファンディング
公益財団法人松竹大谷図書館は「クラウドファンディング<第6弾>歌舞伎や映画、銀幕が伝えた記憶を宝箱で守る」として、46万点以上の資料を収める電動書架のメンテナンスと、約4,000冊もの映画製作当時の記事が貼り込まれた映画スクラップを保護する保存箱を作るプロジェクトのため支援金を募集しています。募集期間は9月5日(火)から10月25日(水)の50日間です。
松竹大谷図書館は、松竹株式会社の創立者の一人・故大谷竹次郎(1877~1969)が昭和30年(1955)に文化勲章を受章したのを記念して、昭和31年(1956)に設立した演劇と映画の専門図書館です。長年にわたり演劇・映画事業にたずさわってきた松竹株式会社が、収集・所蔵してきた資料を広く一般に公開し、研究者や愛好家の利用に供して、芸術文化の振興と、社会文化の向上発展に寄与することを目的として設立されました。
同館には、約300年前の浄瑠璃正本や、阿国歌舞伎の様子を伝える貴重な資料「かふきのさうし」(非公開)をはじめ、演劇(歌舞伎・文楽・新派・新劇・商業演劇を主に)、映画、日本舞踊、テレビ等に関する台本・文献・雑誌・写真・プログラム・ポスター等、46万点を超える資料が収蔵され、これまでにもクラウドファンディングを利用したアーカイブ事業を実施しています。
クラウドファンディング – Readyfor(レディーフォー)
プロジェクトの詳細はこちら↓
https://readyfor.jp/projects/ootanitoshokan6
2017年9月6日(水)映画の復元と保存ワークショップで「ノンフィルム資料の保存と修復」実習を行いました。
8月25日(金)〜27日(日)に「映画の復元と保存に関するワークショップ」実行委員会主催の『第12回映画の復元と保存に関するワークショップ』が行われ、初日の「ノンフィルム資料の保存と修復」東京国立近代美術館フィルムセンターと実行委員会の共催の実習を弊社で担当しました。「ノンフィルム資料」とは、映画に関連する雑誌、書籍、ポスター、チラシ等々を指します。
実習の前には、フィルムセンター所蔵資料の解説と、館内の収蔵庫、書庫、閲覧室を主任研究員の岡田氏をはじめスタッフの方々がご案内くださいました。アーカイブ的、網羅的、合理的といった信念のもと活動されている様子が伝わってくる見学会でした。
「ノンフィルム資料の保存と修復」実習では、国内外からご参加くださった20名とともに、破れた資料に対する和紙とでんぷん糊での修補や、小冊子の金属除去、綴じ直し、背表紙修補を行いました。その後の質疑応答でも、とても実務的な話題が多く、非常に充実した出講となりました。
2017年8月30日(水)定番の組み立て型の被せ蓋式保存箱の重量負荷試験の結果は?
保存容器のなかでも最も定番の商品が、蓋と身のパーツが分かれたタイプの「被せ蓋式」といわれるもの。これには完成箱と組み立て型の2つのタイプがあります。完成箱は接着剤を使い、弊社で最終的な箱の形にまで加工して出荷するタイプです。一方の組み立て型は、蓋と身が、平たい板状のパーツとして出荷され、お客様ご自身が組み上げて作るタイプで、組立には接着剤は必要ありません。
組み立て型は完成箱に比べて価格も安いのですが、強度的にどの程度のものか気にされる方もいらっしゃいます。例えば中に資料を詰め込んだ時に、その重さのために箱が変形したり潰れたりしないだろうか、というご質問をいただくことがあります。
定番であるA3サイズの組み立て型に簡単な重量負荷試験を行いました。目一杯に詰め込んだ資料の総重量を20kg程度と見越して、1個6kgの重石を入れて持ち上げたところ、4個(24kg)入れても問題なく持ち上げることができました。また、蓋の上に重石を10個(60kg)置いても、側板が若干たわむものの、箱がつぶれることはありませんでした。通常の使用においては十分な強度であると考えられます。
ある程度以上の大きさや特に重たい資料の時には完成箱が適していますが、文書や小さなモノ資料、書籍などを整理保管するには組み立て型でも安心してご使用いただけます。
2017年8月23日(水) 修理に使う2種類のポリエステル製不織布。
修理に使う2種類の不織布。不織布とは繊維を織らずに絡み合わせて、熱などでシート状にしたもの。どちらの不織布もポリエステル製で、水を通すが吸水性は低く、薄くて柔軟性がある。
2種類のうち一方は目が詰まり表面が平滑で、繊維の毛羽立ちがないタイプの不織布で、作業中のデリケートな資料の表面を保護する目的で使用される。また、ポリエステル製であるため基本的にデンプン糊が効かず、貼り付いたとしても簡単に剥がすことができる。そこで糊を使う処置をした箇所は不織布で挟んでから、ろ紙や重石を置いて乾燥させ、ろ紙や資料同士の貼り付きを防ぐ。
もう1種類は比較的目が粗いタイプの不織布。水の通りが良く、資料を洗浄する際の洗浄ポケットや、和紙を染色する際の養生に適している。
2017年8月17日(水) 厚くて重い大型洋装本にはブックシュー構造のシェル型保存箱をお勧めします。
書籍用保存箱は資料のサイズや用途に合わせて、製作する箱種を選び、お客様にお勧めするが、特に重量のある書籍を縦置きしたいというご要望にピッタリなのが、底上げしたシェル(二枚貝)型の保存箱だ。
書籍用の定番商品には、比較的薄い冊子などの資料向けのスリムフォルダーと、物理的な保護強度が求められる貴重書などの通常の書籍にはヒネリ留め具付きのタトウ式保存箱がある。タトウ箱は四方に展開できる構造なので、出し入れの時の資料への負担を大幅に軽減できる。しかしいずれの箱も、厚みがあってサイズも大きな書籍を縦置きしたい場合には、底部分にかかる重量を箱が支えきれず、取り扱い時に底が抜けてしまい、資料が落下する危険性がある。
図鑑や辞書、聖書などで特に重量のある大型書籍用にはシェル型の保存箱が強度面でより適している。中身の出し入れの際は書籍を厚手の板紙に載せてスライドさせるので、表紙が箱の内側で擦れる心配がない。洋装本の場合は表紙と本紙の底面の段差だけ底上げした構造(ブックシュー)にすることで、縦置きで保管する時の書籍へのストレスを軽減させている。また蓋をボアテープで固定することで、安全に持ち運びができる。
2017年8月2日(水) 成城大学民俗学研究所様の所蔵する人形や郷土玩具の虫退治に、無酸素パック「モルデナイベ」が使われています。
成城大学民俗学研究所は、日本民俗学の創始者である柳田國男からの寄贈資料を集めた「柳田文庫・民俗学研究室」を基盤とし、昭和48年に設立されました。現在は、図書や文書資料にとどまらず、関連する様々なモノ資料も所蔵しています。
そのひとつが、日本各地から集められた人形や郷土玩具。民衆の生活に身近なワラ、木、土、布、紙などを材料としたものです。しかし、いずれも虫の餌や巣になりやすい素材で、特に木やワラは、収集時にすでに虫が潜んでいることもあるため、収蔵前の駆除は必須ということです。過去には外部に委託して燻蒸処置を行ったこともあったそうですが、民俗資料は数も種類も多く、収蔵時期も不定期のため継続が困難でした。
同研究所では以前、木製の人形に虫が出てしまったときには薬品では駆除することができず、弊社の無酸素パック「モルデナイベ」を使って駆除に成功しました。手軽に殺虫処置を行えることから常備品としてくれています。ただこれまでのサイズの「モルデナイベ」では小さくて、処置できない民具もありました。今回、新製品の大型サイズをすぐに導入していただき、大きなワラ馬(信州地方に伝わるワラでできた馬)の殺虫処置を実施していただいております
2017年7月26日(水)今年の夏の手ぬぐいはゴーヤ柄です。
毎年恒例となっている手ぬぐいの今夏バージョンは、ゴーヤ柄に決まりました。ゴーヤは夏バテ予防に効果的な野菜です。これからますます暑さが厳しくなりますが、この夏を元気にお過ごし下さい、というスタッフ一同の願いと一緒に、お客様の元へお届けいたします。
(柄の中にはゴーヤでできた顔が隠れています。ぜひ探してみて下さい。)
2017年7月19日(水)写真保存の第一人者 ラヴェンドリン氏の『写真技法と保存の知識』が出版に。
現在の写真保存における予防的保存の理論的な基礎を据えたベルトラン・ラヴェドリン氏 の主著『 Connaître et conserver les photographies anciennes(仏語タイトル)』の完全日本語版が『写真技法と保存の知識』として青幻舎から出版された。原書のフランス語版、英語翻訳版共にベストセラーとなっており、すでにスペイン語版、ベトナム語版が刊行されている。
著者のラヴェンドリン(Bertrand Lavédrine)氏はパリ自然史博物館・教授、フランス国立保存研究センター・所長(併任)。現在、国立民族学博物館客員教授。日本語版への翻訳は白岩洋子氏(紙本・写真修復家、白岩修復工房主宰)、監修は日本大学芸術学部教授 高橋則英氏(日本大学芸術学部教授)による。
本書では、 デジタル以前の主要な写真技法を網羅し、各技法の歴史・製作法・劣化とケアについて、わかりやすい図解と豊富な作成図版で一覧できる。第3部の「保存」には、保護包材、保管環境、展示、デジタル化–の項があり、写真の技法を判別した上で、 どのような劣化が起こり、 それに対しどのようにケアしていくかについて丁寧に解説されており、写真を長く保存するための手引書として真に役立つ一冊になっている。
(内容紹介 : 本書カバーより)
「近年、初期写真への関心はコレクター、保存修復家、アーキビストだけでなく、家族アルバムや地域の写真の保存を望むアマチュアの人々の間でも高まっている。写真の歴史はわずか170年という短いものであるが、その歩みの中で数多くの技法が誕生してきた。本書はデジタル以前の写真を理解し保存するための総合的な入門書であり、写真の技法に関して役に立つ情報を集約した、類のない一冊であ る。筆者はそれぞれの技法—ダゲレオタイプ、アルビューメン(卵白)ネガ、ダイトランスファープリントなど一の歴史と発展、材料、劣化の原因やメカニズムを概説し、保存や取り扱い上の注意に関して具体的に助言している。
本書はこの分野の近年の発展を開示し、包括的に解説した簡潔で理解しやすい一冊として、保存修復家、学芸員、コレクター、ディーラー、写真家、家族アルバムの持ち主、アーカイブや家族写真を長く大切にしたい人など、初期写真の保存に関する知識を求めるすべての人々に貢献することだろう。」 ※本書日本語版の翻訳にあたり、原文の内容を現在の状況に合わせて更新し、さらに本書の英語版も参照したうえで技術的な補足を付している。
以下は 青幻舎の案内 から。
『写真技法と保存の知識 デジタル以前の写真―その誕生からカラーフィルムまで 」
著者:ベルトラン・ラヴェドリン (フランス国立コレクション保存研究センター所長)
翻訳:白岩洋子(紙本・写真修復)
監修:高橋則英 (日本大学芸術学部教授/写真史・画像保存)
□ 判型:B5変
□ 総頁:368頁
□ 製本:並製
□ ISBN: 978-4-86152-617-6 C1072
定価:本体5,500円+税
2017年7月12日(水) 「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」で実習や講義を行います。
NPO法人映画保存協会主催による「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」が2017年8月25日(金)〜27日(日)に開催されます。弊社では、このうち25日の「ノンフィルム資料の保存と修復」と「ビネガーシンドロームの対策」での実習、26日の「映画保存のテクニカルソリューション」の講義を行います。
「ノンフィルム資料の保存と修復」では、映画に関連する紙媒体資料の長期保存のための手当てを、「ビネガーシンドロームの対策」では、劣化が進行している個々の映画フィルムへの対応とコレクション全体に対してできる取り組みを、実習やグループディスカッションを通して体験的に学んでいく講義を企画しています。参加者の方に実作業体験を通して今後の課題について理解を深め、参加者同士のネットワークの強化を目的としています。学芸員、司書、アーキビスト、研究者、技術者、学生、映画が大好きなすべての方々が対象です。
ワークショップの詳細と募集要項は、こちらです。
2017年7月5日(水)文化財向け保存容器を製作するアルバイトスタッフを募集
弊社では文化財や貴重資料を長期保存するための保存容器を製作するアルバイトスタッフを募集しています。ヘラやカッター、接着剤を使って箱を組み立てる仕事や、容器に収納する資料のサイズ採寸、納品の補助、資材の搬入や商品の梱包など、さまざまな仕事をお手伝いいただける方を募集しています。形や大きさの違う箱を一点ずつ手作業で完成させていく仕事ですが、ほとんどのスタッフが未経験から始めています。図書や博物資料の保存に興味のある方、手仕事や工作が好きな方はぜひご応募ください。詳しい募集要項は下記サイトをご参照ください。お問い合わせは担当(小林)までどうぞ。
2017年6月28日(水) 明治期の国産リボン工場跡から発見された見本帳への手当て
洋装の浸透とともに、明治中期には一般にも普及したリボン。東京都台東区谷中にあった、日本で最初のリボン工場跡が2013年に解体・整地されました。工場はその屋根がノコギリの刃のような形状のために「鋸屋根工場」として、この地域の住民に親しまれてきました。 その後、リボン工場の建物は印刷工場として使われてきましたが、2013年の解体にあたり、 リボン工場時代のものと思われる洋書を中心とした1900年前後の繊維産業関係の文献資料や研究ノート、国内・国外製の多数のリボンを貼った見本帳などが発見され、これらの遺産の保存と継承を図る「谷中のこ屋根会」様が譲り受け管理してきました。今回の弊社でのリボン見本帳への処置は同会様からの委託です。
見本帳は、リボンを貼った二つ折りの台紙30枚を洋装本風のケースに収納したもの。リボンは織りの裏面を見ることができるよう、上辺のみ、あるいは4隅のうち3点のみで糊止めされている。そのため、開閉時にリボンが垂れ下がって折れた状態で挟まれやすく、繊維が脆弱になったリボンが、折れ目で破断しているものも見受けられる。
刷毛等で表面の塵、埃をクリーニングした後、接着剤が劣化して台紙から外れたリボンをデンプン糊で貼り戻した。リボンの折れは、わずかに加湿して折れを伸ばし、フラットニングした。リボン端のほつれは、糊差ししてほつれが広がらないよう止めた。処置後、台紙は二つ折りした中性紙のフォルダで挟んだ。フォルダは開閉時のリボンの垂れ下がりやリボン同士の接触を防ぐため、内側にも挟み込んだ。ケースは強度が低下しているため台紙の再収納はせず、革装部分に対して劣化した革表面の粉の剥落を抑えるレッドロット処置を行った。フォルダに挟んだ台紙を重ね、ケースを GasQシートに包み、まとめて保存容器に収納した。
2017年2月1日(水) お客様での保存箱の組み立てが、より容易になるように、説明書の改訂と更新を行なっています。
弊社の保存箱には、お客様の手で組み立てていただく商品も多数あります。組立式保存箱は、組み立てて使用する時まで平たいまま保管ができるので場所をとらないというメリットもあり、ここ数年は特に多くのお客様にご利用いただいております。初めてご購入いただいたお客様にもスムーズに組み立てていただけるよう、商品に添える組立説明書をより分かりやすいデザインの物へ順次刷新しております。きれいに箱を組み上げていただくためのコツをイラスト付きで解説しています。
2017年6月14日(水) 学習院大学図書館様所蔵の華族会館寄贈図書(漢籍・和装本)277点の修理報告書を掲載しました。
弊社では平成26年度から平成28年度までの3年間、学習院大学図書館様が所蔵するコレクション「華族会館寄贈図書」の保存修復処置をお引き受けする機会をいただき、処置を行ってきました。平成26年度は洋装本62点を対象とし、弊社HPにもその報告を掲載しております。今回は平成27年度から平成28年度までの2年間で行った漢籍、和装本277点に対する保存修復処置についての報告『学習院大学図書館様所蔵「華族会館寄贈図書」漢籍・和装本の保存修復処置事例』を掲載しました。
なお、このコレクションは同大学のデジタルライブラリーで公開されております。
2017年6月7日(水) 大判の資料にも対応できる特注クリーニング・ボックス
資料に付着した塵埃やカビ残滓の、屋内での除去作業用にご好評をいただいておりますドライ・クリーニングボックス。お客様のご要望にお応えして、このほど一回り大きなサイズの製品を作りました。従来の定型品では対応が難しい資料サイズのドライ・クリーニング用ボックスを特注品としてお引き受けできます。ご相談ください。
従来品(幅580×奥行き450×天地445ミリ)に比べ、今回の製品のサイズは幅750×奥行き500×天地445ミリ。幅と奥行きを広くしたことで、大判の図書や雑誌などを見開いてクリーニングできます。
ドライ・クリーニングボックスの機能のポイントは、ボックス内で、奥の空気清浄機(HEPAフィルター装備)に向かって十分な気流が発生し、塵埃などが作業者側に来ないこと。今回の大きなボックスも定型品と同様に、気流が手前から奥へと流れているか、気流検査器で確認済みです。
空気清浄機とボックスを1つにまとめた梱包で出荷します。作業時に現場で梱包の箱から出して数分で組み立てて、作業を開始できます。
2017年5月31日(水) 耐水性を付与できるシクロドデカンを線状に資料に含浸して水性処置をする。
耐水性が無く処置中に滲む恐れがあるインクは、昇華性のシクロドデカンを塗布し、養生してから、洗浄や脱酸性化処置、裏打ちやリーフキャスティング等の水性処置を行う場合がある。
シクロドデカンは元々は固体だが、熱を与えると液体になる。この状態でインク等のうえから塗布・含浸し乾かして再び固体にし、部分的に耐水性にした後に洗浄等の水性処置を行う。全ての処置を終えたあとに放置しておくと、固体のシクロドデカンは気化(昇華)して資料から抜ける。
これまでは、手作りのホット・ブラシ、電熱線を中に組み込んだプレートなどを使ってきたが、必要以上に線が太くなったり、層の厚みがまだらになり昇華スピードのコントロールが難しいことなどから、つど改良を行っていた。今回、シクロドデカンの塗布によく利用されるKistka(イースターエッグの装飾に使用するワックスペン)と比較してみたところ、これまでより繊細な線が引けるので、必要な箇所にのみ塗布することができた。昇華スピードの調整については今後も引き続き課題ではあるものの、処置の精度が向上する点は期待できそうである。
関連情報