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週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2015年01月26日(月) 没食子インクによるインク焼け破損箇所修補のため、極薄の補修紙を作成する

没食子インクによるインク焼けの破損箇所を修補するため、極薄の補修紙を作成する。インク焼けを部分的に処置する場合、水分を多く含む接着剤を用いると、没食子インクの劣化要因である鉄イオンや有害な酸化合物を拡散させる危険性があるため、なるべく水分を用いない方法で行う。まずポリエステルフィルムの上にテープで型を作り、ヒドロキシプロピルセルロース溶液を塗布し、均一になるようガラス板でならす。和紙を被せて乾燥させた後、テープごと持ち上げることで薄い和紙でも破れずにはがすことができる。処置の際は、破損箇所に補修紙を当て、溶剤(イソプロピルアルコールなど)で再反応を促しながらスパチュラで押さえて接着する。

2014年10月23日(木) 新聞資料に対する洗浄・脱酸性化処置

新聞資料に対する洗浄・脱酸性化処置。基材の紙とイメージ材料へのスポットテストを行い、使用するアルカリ性溶剤に対する耐性が確認できたため水性の処置を行った。資料をクリーニング・ポケットに挟んで養生し、弱アルカリに調整した洗浄液、その後脱酸液に浸漬する。画像4枚目は処置後の洗浄・脱酸液。紙の中の可溶性の酸性物質が洗い出されて白色度としなやかさが回復し、処置後の平均pHは3.6から8.5に上がった。

2014年09月26日(金) カビが発生した資料のクリーニング

カビが発生した資料のクリーニング。資料をモルデナイベでパッキングしてカビ残滓の飛散を防止した状態でお預かりし、工房内に設置した簡易ドライクリーニング・ボックスの中でクリーニングを行う。カビ資料を扱う際は特に、作業設備、使用する道具を専用に備えて、作業者自身も手袋やマスク、エプロン等を着用して防御する。

2014年09月05日(金) デジタル撮影の事前処置

脆弱化した資料をデジタル撮影するための事前処置。本紙のしわを伸ばして極薄の和紙を重ね、上から薄めたデンプン糊を均一に噴霧する方法で補強とフラットニングを兼ねた裏打ちを行った。文字も判読しやすく、撮影時安全に取り扱える。画像3枚目が処置前、4枚目が処置後。

2014年02月06日(木)

原資料のマイクロ化・デジタル化に伴う、無線綴じハードカバー製本の解体作業。安全かつ確実に資料の情報を撮影するために、見開き具合を十分に確保しなければならない。ハードカバーから本体を外した後、5ミリ厚程度にさらに分割していく。撮影後は紐で平綴じし直し、カバーと接合して復元する。

2014年01月17日(金)

和装本の本紙への足付け。過去の修理で本の背を化粧裁ちしたために、寸法が足りなくなり、文字が綴じの内側に隠れている。今後も現物を利用したいという所蔵者様の要望により、一度解体し、綴じしろとして一丁ずつ和紙の足を付けて綴じ直す事で、ノド元まで開き文字が読めるようになった。

2013年10月28日(月)

革装本のタイトルラベルを和紙で作る。レッドロットによる損傷が著しく背表紙の革を活かせない場合、タイトルも新たに作ることになる。弊社ではPC上でフォントや文字サイズ、色を変えたタイトルラベルを数パターン作り、和紙に印刷したものの中から一番合うものを背に貼り付ける。最後に背表紙全体に保革油を馴染ませて仕上げる。

2013年01月17日(木)

原資料のマイクロ化・デジタル化に伴う解体・復元・容器収納作業。資料を代替化のために撮影する際、安全に撮影するのに必要な見開き具合を確保するのが困難な場合、予め解体を行う。撮影後は、再製本や新規表紙作成による綴じ直し、あるいは保存容器への収納を行う。いずれの行程も所蔵者様、撮影業者様、弊社の3社で事前に方針を決める。画像は簿冊(合冊製本)、タイトバック(本体の背と背表紙が接着された構造)の革装丁本、金属による平綴じの小冊子の形態の解体前、解体後、復元後、容器収納の例。

2012年10月04日(木)

粘着テープを除去し、修補する。粘着テープは外れた表紙をつなぐために貼られていた。表面からアルコールで湿りを入れて接着剤を緩ませ、表装の革に注意しながら綿棒やスパチュラを用いて慎重に取り外していく。接着剤も残さず除去したのち、新たにヒンジを作成して表紙と本体と接合した。

2012年09月21日(金)

ロール・エンキャプシュレーションによる大判地図の修復手当て。資料の一端に和紙の足を付けフィルムで挟み、和紙ごと溶着する。フィルムの他の三辺を溶着しないことによって、巻き込む際に生じるフィルムのたわみを逃がす。資料の保護性は極めて高く取り扱いも安全、平置きの保管が難しい大型の資料でも、芯無しでロール状に仕上げることができる。最後に平紐の輪で止めて保存容器に収納する。

2012年08月30日(木)

明治19年発行の英語辞書。本紙は和装本のように前小口側が山折で片面テキスト、糸による3穴の平綴じ、小口の3方にはマーブルが施され、表紙の芯材は木製のくるみ製本。明治期に伝わった西洋の製本の構造と、和装本の構造が混在している。表紙が本体から外れ、本紙の一部が綴じから外れていたため、本紙を和紙で補強した後に綴じ直し、表紙・本体の再接合を行った。

2012年08月16日(木)

外れた表紙を糸で結びつけるタケッティング法(Tacketing)で再接合する。本体のヒンジ部分から一括目ののどに向かって、2箇所に孔を開けて糸を通す。糸の両端は表紙の芯材ボードと革の間に埋め込み、重量のある資料も表紙と本体をしっかりと繋ぎ合わせる事ができる。上から染色した和紙で覆い、見た目も馴染むように仕上げる。

2012年06月21日(木)

巻き癖の強い図面の水蒸気による加湿フラットニング。保存修復手当を行うためには、まずはこれらを平らにする必要がある。容器に室温の水を張り、資料が直 接触れないよう底上げして網を置き、資料を入れたら蓋をかぶせて加湿する。この方法で、ある程度の量をまとめて処置する事ができる。

2012年05月31日(木)

ハーフ・バインディングの革装本の修理。オリジナルの革の背表紙と表紙のコーナー部分はレッドロットにより劣化していた。本体の一部に見られた丁の外れは、隣り合う括と糸で綴じ合せた。本の重量と厚みによる背への負担を考慮し、新規革装丁での処置をした。最後にオリジナルの背表紙のタイトルパネルを新規背表紙に貼付した。

2012年03月29日(木)

裏面に文字が書かれているトレーシングペーパーのエンキャプシュレーション。アルカリを含まない台紙+ガス吸着紙を額縁状に切り抜いて、文字を覆わないよう資料周辺を囲う。裏面からファイバー・ブリッジ法で台紙に固定し、最後にエンキャプシュレーション処置で完成。

2012年02月16日(木)

経年劣化により物理的強度が低下したトレーシング・ペーパーの修復。ゴアテックスを用いて全体に均一な水分を与えながらゆっくりと伸展させ、サクションテーブル上でファイバー・ブリッジと喰裂きにした和紙による破れの修補を行った。トレーシング・ペーパーは液体の水に敏感なため、接着剤は非水性のHPC(ヒドロキシ・プロピル・セルロース)を使用した。この後、台紙に固定しエンキャプシュレーションを行う。

2012年02月02日(木)

ワイヤー・ソーイング(wire sewing)により綴じられた書籍。括を針金で中綴じし、製本されている。ワイヤー・ソーイング・マシーンは、1880年ドイツで開発されたが、糸綴じ 機の普及と、針金が錆びて本が崩壊することから、すぐに姿を消していった。処置として、解体・金属除去をし、括の背を修補、綴じ直しの後、表紙と本体を接 合した。右端の画像は、http://t.co/WEwd K1N から。

2012年01月19日(木)

革のフルバインディングを和紙で直す。革装丁本の修復に、部分的に和紙を使うのは欧米では一般的だが、破損の著しい背表紙すべてを和紙で代替した。オリジナルの背バンドを活かしつつ厚めの和紙で背ごしらえをし、さらに染色した和紙で全体を覆う。アクリル絵具で補彩し、表紙の革と共に保革油を全体に馴染ませることで、全体に統一感がでる。

2011年12月1日(木)

火災によって本紙の一部が焼けてしまった巻子状の家系図。被災後に一度、裏打ちによる修理がされているが、細い軸棒に巻かれていたため、 焼けた部分を中心に折れや剥落が生じている。表装の解体後、糊差しと極薄の和紙による表打ちを行なってから、径の大きな中性紙の丸筒に巻き、保存容器に収納した。

2011年11月17日(木)

リンプ・ペーパー製本。柔軟で丈夫な白なめし革(トーイング革)を、本体の綴じと本体天地の花裂の支持体に使い、孔を空けた表紙(厚い楮紙)に支持体を通して接合する。見開きも良好。接着剤を用いないため可逆性が高く、表紙が失われた貴重書のコンサベーション・バインディングとして用いられている。

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