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週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2018年6月13日(水) 紙ヒモ用の「薄葉紙くるみん」を試作しました。

1月に販売を開始した新薄葉紙「Qluminくるみん」で、このほど紙ヒモ用の小型ロール品を試作しました。お客様に試していただいている段階ですが、「薄くても丈夫」、「スペースをとらずに、すぐに作れて、扱いやすい」、「大きな紙からカットしないので無駄なく作れる」等々と好評です。

 

文化財や美術品を梱包する現場では薄葉紙は欠かせない存在であり、「包む」以外にも、緩衝材と資料を固定する「紙ヒモ」としてよく使われています。大判の薄葉紙を細長く裂き、それをしごいてヒモ状にするのですが、紙の柔らかさと加工性の良さで資料を傷つけず、手早く作れるのが利点です。

 

今回、より簡単に紙ヒモを作るための「紙ヒモ用くるみん」を試作しました。ロール型なので扱いやすく、好きな長さでカットできるのが特徴です。大型品の梱包に限らず、破損した資料の固定や、小物用の緩衝材としてもご利用いただけます。

 

※追記:小型ロール品「くるみんのひも」、販売を開始しました。新薄葉紙「Qluminくるみん」のページをご覧ください。

 

2018年5月9日(水)資料を洗浄する時の水の物性の変化を確認する計測機器。

修理作業では、毎回異なる性質の資料を扱うにあたり、処置結果を同じレベルにするための目安として、計測機器を用いて処置に使用する材料の物性の変化も測り、その値を参考にしながら処置を行います。特に資料の洗浄などの水性処置では、処置中の水のpH・TDS(総溶解固形分)・温度等の変化を測り、処置後の各種値の変化を確認します。

 

これまでは計測結果の表示画面と計測用の電極が一体になったハンディータイプの計測機を使用していましたが、新たに、河川などの水質検査用の電極投げ込みタイプを導入しました。手元の画面で数値の変化を確認しながらチェックシートの記入が行え、また、大きな洗浄槽の中でも計測機の水濡れを気にせず処置を行いながら数値が確認できるようになり、重宝しています。なお、4枚目の画像は処置中・処置後の洗浄液の色の変化を比較したもので、数値の確認と併せてこうした目視観察・記録も行っています。

2018年4月19日(木) 北原白秋の晩年を記す籔田義雄の日記を修理し展示へ

小田原市立図書館様より、昭和初期の日記帳2点の修理製本をご依頼頂きました。この日記帳は、北原白秋のお弟子さんで、秘書も務めた、詩人の籔田義雄(1902-1984)の昭和14年と昭和17年のもの。ともに、白秋の晩年の記録にあたります。4月21日(土)からの町田市民文学館ことばらんど企画展「童謡誕生100年 童謡とわらべ唄 ー 北原白秋から藪田義雄へ 」に、昭和17年のものが展示されます。

 

処置としては、破れや欠損のあるブックジャケットへの修補と、外れたヒンジの修理を行いました。修補ではジャケットの色に染色した和紙とでんぷん糊で繕い、ヒンジの修理ではオリジナルの背ごしらえを除去し、新たに和紙や中性紙で背ごしらえを行いました。新しい背ごしらえにより背が支えられ、本体を開いた状態での展示にも、安全に対応できるようになりました。

2017年10月18日(水)接着剤で無線綴じされた図録を折丁仕立てに作り直し、きれいに見開くように再製本する。

無線綴じされた図録。本紙の背を断裁し、それぞれのページを一枚ものにして束ね、背側の端を接着剤で固めて製本されている。経年により接着剤が劣化し、本紙は一枚ずつバラバラの状態に外れている。本紙が厚く柔軟でないため、そのまま糸で平綴じで修理を行うと見開きが悪くなり、紙への負荷もかかる。

 

断裁された本紙の背を短冊状の和紙でつなぎあわせて折丁の背を作り直した後、折丁を組み合わせた括を作り、糸で綴じ合わせてゆく(かがり綴じ)。手間のかかる工程であるが、これにより、のど元まできれいに見開ける仕上がりになる。

 

* かがり綴じ、平綴じ、中綴じ、無線綴じの断面図

2016年5月11日(水) 電動ドリルで資料に穴を開ける。

電動ドリルで穴を開ける。目打ちが紙を「押し広げて」穴を開けるのに対し、ドリルは紙を「削り取って」穴を開ける。酸化・酸性紙化により紙力が低下した紙は、目打ちで押し広げて穴を開けると、周囲にひび割れが広がってしまう場合がある。特に小冊子に綴じ穴を開ける処置ではドリルを用いた方が資料にかかる負担が少ない。また、ハードカバーの外れた表紙を本体に再接合する方法のひとつのタケッティング法では、表紙ボードの断面から正確に細い貫通孔を開ける必要がある。このため、径が1㎜以下の刃を装着したペン型のドリルを使う。一見大胆な道具にも思えるが電動ドリルの使用が適している処置は多々あり、修理に欠かせない道具のひとつである。

2013年01月17日(木)

原資料のマイクロ化・デジタル化に伴う解体・復元・容器収納作業。資料を代替化のために撮影する際、安全に撮影するのに必要な見開き具合を確保するのが困難な場合、予め解体を行う。撮影後は、再製本や新規表紙作成による綴じ直し、あるいは保存容器への収納を行う。いずれの行程も所蔵者様、撮影業者様、弊社の3社で事前に方針を決める。画像は簿冊(合冊製本)、タイトバック(本体の背と背表紙が接着された構造)の革装丁本、金属による平綴じの小冊子の形態の解体前、解体後、復元後、容器収納の例。

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