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2020年3月11日(水)寒川文書館での資料保存ワークショップに出講しました

2月1日(土)、神奈川県寒川町の公文書館、寒川文書館にて開催された資料保存ワークショップ「錆びや傷みから記録を守る」で弊社スタッフが講師を担当しました。

 

寒川文書館は公文書館法に基づき寒川総合図書館の4階に設置されている公文書館であり、行政資料や古文書、郷土資料等を収集、整理、保存する施設です。今回のワークショップは、文書館利用者やボランティアの方などの町民や地域の一般の方々、寒川文書館館長ならびに職員の皆さまを対象として開催されました。

 

本や小冊子などへの簡易的な手当てについて、下記のプログラムで資料保存実習を行いました。

 

* 傷んだ冊子の劣化、損傷の原因、本体の構造、綴じ方について
* 修理に使う道具の説明
* 金属除去、修補、綴じ直し

 

傷んだ冊子を解体し、普段あまり見ることのない本の内側を観察することで、劣化や損傷が起きた要因を確認しました。

 

資料の修理には特殊な道具を使用することも多いのですが、今回のワークショップでは修理道具の中でも割とポピュラーなマイクロニッパー、綴じ糸、綴じ針、筆、糊、ろ紙、不織布などの道具を使用し、これらの使い方や注意点についてご紹介しました。

 

破れてしまったページの修理には水で薄めたでんぷん糊を使います。でんぷん糊は中性であること、水溶性なので後で剥がせることから、資料保存の観点で非常に優れた接着剤ですが「水分量」の調整が肝になり、刷毛や筆への糊の含み具合や塗布後の処理などに気を遣います。とくに劣化資料への修補では、糊が薄すぎると和紙が剥がれたり輪染みになったり、濃すぎると紙がこわばる原因にもなるので、こうした点に気をつけながら実践していただきました。

 

質疑応答では、資料保存に関する実践的な質問が多く寄せられ、基本技術の習得のみならず、資料の取り扱いを注意することで予防できる損傷も多いことを弊社の事例を紹介しながら解説しました。

 

ご参加いただいた皆さまに心より御礼申し上げます。

 

◇具体的な資料の修理手順はこちらで紹介しています。また、弊社で行った資料保存ワークショップはHPで掲載しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

 

《関連情報》
独立行政法人国立女性教育会館主催『アーカイブ保存修復研修』
私立大学図書館協会和漢古典籍研究分科会主催『古典籍資料の補修実演講座』
NPO文化財保存支援機構主催『平成30年度文化財保存修復を目指す人のための実践コース』

 

2019年4月24日(水)紙の酸性度を測るためのメルク社のpHストリップの使い方。

資料の修理にとりかかる前の作業として、カルテの作成、状態撮影、スポット・テストとpH測定(※1)があります。なかでも、紙の酸性度合いをみるためのpH測定は、紙媒体記録資料の修理においてかかせない工程のひとつです。

 

和紙に墨書きされた文書や版本とは異なり、種類が豊富な近現代の文書や書籍の紙は、その劣化要因も損傷状況も様々です。特に、近現代の資料は、酸性紙問題(※2)として指摘されるように、紙の内部で化学的な酸性化が進むことで、紙力低下、それに伴う破れや欠損などの重篤な物理的損傷につながる恐れがあります。

 

こうした紙に対する修理技術の一つとして、紙中の酸を中和し内部にアルカリ・バッファー(※3)を残すための「脱酸性化処置」があります。pH値は、その化学的損傷度合いと、脱酸性化処置が問題なく、また、万遍なく行われたかを見るための指標として計測されます。pH値と、中和後のアルカリ・バッファー量とは全く別のものではあるものの、劣化度合いを測るためのいくつかある指標の中で、紙の保存性と密接につながっているといえます。

 

pHは、元々液体の水や水溶性の液体の酸性やアルカリ性を示す指標ですが、固体である紙にはそのままでは適用できません。厳密に紙のpHを測るときは、細かくカットした紙片を水の中に入れて、しばらく置いてから電極式のpH計測器で測定(JIS P 8133 1)しますが、この方法はいわゆる破壊的なサンプリング・テストになるので、修理の工程で行われることはほぼありません。代わりに使用されるのが「pHストリップ」です。これは、指示薬が塗布されている面をわずかな水分で濡らし、紙の表面と接触させ、その変色具合でpHを測定するという方法で、弊社ではメルク社のpHストリップを使用しています。

 

この方法で計測するのは紙の表面pHなので、厚みがあるものや、水の浸透性がよくない紙の内部のpHを測ることはできません。ただし、裏まで水が抜けるような紙質であればかなり正確に測定できます。

 

pHストリップの指示薬は水に濡れても色移りすることはありませんが、あまり水分が多いと、計測する紙の方がヨレたり、輪染みといわれる円形のシミを作ってしまうことがあります。pH測定もスポット・テスト同様、接触させる面をなるべく最小限に留めるために、例えば指示薬部分を半分に切って使用したり、計測後はすぐにろ紙を当ててしっかりと水分を取り除いたり、もちろん、水に滲むようなインクや色材の箇所では行わないなど、事前の準備を整えて行います。

 

[測り方]
①pHストリップを縦半分に切り、指示薬の部分も半分くらいにカットする。ポリエステルフィルムなどの小片を、計測する紙の下に敷く。
②蒸留水(脱イオン水であること)で、pHストリップの指示薬のついた面を湿らせる。浸したり、スポイトなどで滴下する。余分な水分はろ紙に吸い取らせる。
③指示薬の面を紙表面にあてて、上からもう一枚のフィルムで挟みマリネする。指で軽く押さえたり、ごく軽い重しを載せる。
④1分ほど経ったらストリップを外して、変色具合をカラーチャートと比較しpH値を確認する。

 

 

※1 pH:「水素イオン濃度指数」のこと。0~14までの数値によって水溶液の酸性またはアルカリ性の程度を表す。水溶液中のイオン化した水素イオン(H+)と、対極する水酸化物イオン(OH-)が同量存在するときが中性(pH7)、水素イオン濃度が上回ると酸性、逆に水酸化物イオンが多いとアルカリ性を示す。pはポテンシャル(potential)、Hは水素(Hydrogen)。

 

※2 酸性紙問題:紙の製造過程において、サイズ剤(にじみ止め)である「ロジン(松ヤニ)」の定着剤として、「硫酸アルミニウム(硫酸バンド)」が、19世紀後半から1980年代にかけて生産された紙に用いられた。硫酸アルミニウムと紙中の水分が反応することで強い硫酸が生成され、これが触媒となって紙のセルロースを加水分解し破断させる。さらに、硫酸の脱水作用により、潤滑油のような役割を担っている紙中の水分が奪われ、繊維の角質化が起こり紙が脆くなる。製造から50年足らずで紙力が極端に落ちてしまう資料が図書館やアーカイブズに大量に所蔵されていることが世界的な問題となり、これを契機に、中性紙の国際規格制定へとつながった。

 

※3 アルカリ・バッファー:紙中や大気中の酸性物質による劣化を予防するために紙に保持させるアルカリ残留物。ISO9706:1994 Paper for documents Requirements for permanence(永く残る紙)で定めている長期保存用紙の場合、「乾燥重量比で2%の炭酸カルシウム相当量を含んでいること」とされるが、文書や書籍の紙として長期に置かれ、かつ、すでに酸性化した紙に対して行う中和後のバッファー付与で、これだけの量を残留させることは難しい。

2019年4月17日(水)バインダー内の分類や仕切りに最適なタブ付きインデックスシート。

アーカイバル・バインダー内での分類・仕切りに使う中性紙製タブ付きインデックスシート。タブは見やすい山ずれ見出し式で、資料リストと連動したコードや管理番号などを印刷したラベルを貼れば、 ファイリングした資料をすばやく検索し、かんたんに識別できます。

 

とくに資料形態が多様な写真系資料の整理には最適で、形態・種類・年代などの大まかな分類で整理したものでもインデックスシートで仕切ればアーカイバル・バインダー1冊で一括収納・保管できます。

 

中性紙を使用しているのでインデックスシート自体にも印刷できます。例えば、資料形態(紙焼き、ネガ・ポジフィルム等)、撮影年月日、資料の中身(何の写真か)、保管場所などの「索引情報」をシートに印刷すれば、開かなくても中身が分かるような写真台帳としても使えます。

2019年2月20日(水)修理前に行うスポット・ テストとサンプリング・ テストとは?

修理にとりかかる前に行う作業として、カルテの作成、状態撮影、さらにスポットテストとpH測定があります。このうちスポット・テストは大別すると2種類に分けられ、目的がそれぞれ異なります。

 

まず一つは、資料の基材となる紙やイメージ材料に対して、スポット(点)状に試薬を接触させて行うテストです。このテストでは、処置に使用する水溶液や溶剤に対し、修理対象となる紙やインクがどのような反応を示すかを見ています。例えば水に「滲むか滲まないか」だけでなく、その程度や感度、脆弱性をみることで、想定する処置をより具体的にシミュレーションすることが可能となり、場合によってはこの段階で処置方法を再考し、より効果的な手法に転換できることもあります。簡便さ、速さが利点ではありますが、試薬を接触させることで見た目を変えることがないよう、テスト範囲は最小限に留める必要があります。一紙面の中でもどの箇所で行うべきかは慎重に判断しなければなりません。

 

もう一つは、本紙から落ちた微細な破片や、資料を構成する付属材料(粘・接着剤など)に対して試薬を用いて行うサンプリング・ テストです。反応をみるためのスポット・テストとは異なり、本紙や付属材料に含まれる物質を識別するために行います。精密な検査を求める場合はより専門的な分析機器が必要になりますが、修理の方向性を見定めたい時には短時間かつ目視で分かりやすく判別することが可能です。例えば試薬の一つにデンプンを検出する「よう素よう化カリウム溶液」があります。これは、過去の補修時にデンプン糊が使用されたことが分かれば、その補修紙を除去する際、デンプン糊の接着力を緩ませるために水を用いた水性処置は効果的で安全性が高いという判断ができます。

2018年8月8日(水)粘着台紙に貼られた写真の剥離は、刃先を温めたペインティグナイフで。

粘着テープや粘着台紙に貼られた写真などの剥離に使うペインティングナイフ。慎重に進めなければならない細かい作業に必須の手道具のひとつである。

 

ペインティングナイフは主に油彩画の制作に使用する小さなコテ状の道具で、柄部分と段違いに菱形等の形をした金属製の刃(ブレード)がつく。刃の部分は薄く柔軟で弾力があり、平らな面に押し当てると密着してしなやかに曲がるため、隙間に差し込み剥がす作業に適している。

 

粘着テープの除去、粘着台紙のアルバムに貼られた写真を剥がす処置などでは、刃をアイロンで温め、隙間に滑り込ませて熱で粘着剤を緩ませながら取り外す。特に写真の場合は、写真を折り曲げて傷つけないよう、しなやかさを生かして台紙に刃を沿わせながら分離してゆく。

2018年5月9日(水)資料を洗浄する時の水の物性の変化を確認する計測機器。

修理作業では、毎回異なる性質の資料を扱うにあたり、処置結果を同じレベルにするための目安として、計測機器を用いて処置に使用する材料の物性の変化も測り、その値を参考にしながら処置を行います。特に資料の洗浄などの水性処置では、処置中の水のpH・TDS(総溶解固形分)・温度等の変化を測り、処置後の各種値の変化を確認します。

 

これまでは計測結果の表示画面と計測用の電極が一体になったハンディータイプの計測機を使用していましたが、新たに、河川などの水質検査用の電極投げ込みタイプを導入しました。手元の画面で数値の変化を確認しながらチェックシートの記入が行え、また、大きな洗浄槽の中でも計測機の水濡れを気にせず処置を行いながら数値が確認できるようになり、重宝しています。なお、4枚目の画像は処置中・処置後の洗浄液の色の変化を比較したもので、数値の確認と併せてこうした目視観察・記録も行っています。

2017年10月11日(水) 資料のファイルと保存処置が同時にできるアーカイバル・バインダーの容量を拡大した改良品を開発中です。

アーカイバル・バインダーは透明のリフィルポケットに1枚物の紙資料などをファイルできる、リングバインダー付きのシェルボックスです。資料のファイリングと保存処置が同時にできるバインダーとして開発しました。透明リフィルに収納したまま中身の確認・閲覧ができるため、書類や原稿・印刷物・写真プリント・ネガフィルム・スライドなどの整理に便利です。また、資料の表裏を確認できるので、パンフレットやカタログなど薄い冊子のコレクションに利用するお客様もいらっしゃいます。

 

リフィルの素材は化学的に安定性の高いポリプロピレン製で、PAT(ISO18916:写真活性度試験)もパスしています。一般のビニール製品とは違い、素材に劣化要因となる可塑剤などの添加物は含みませんので、中の資料に安全です。

 

より沢山の資料を1箱に収納したいとのご要望をお客様から受け、バインダーのリングサイズを大きくした箱を試作中です。収納量が増えた分、中身の荷重に箱や部品が耐えられるよう、設計に改良を加えながら強度の検証を重ねています。販売開始までもうしばらくお時間をいただきますが、現行商品に比べ1.5倍程度の容量拡大が目標です。

2017年9月20日(水)本紙の破れを修補するときの道具・材料とセッティング

本紙の破れを修補するとき、デンプン糊を和紙に塗布、もしくは本紙に塗布して和紙を当てて補強する。デンプン糊は接着力が非常に強いので、水で薄めて使用するぐらいがちょうど良いが、薄すぎると和紙が剥がれたり輪染みになったり、濃すぎると紙がこわばる原因になる。

 

 糊を塗布する際は筆や刷毛を使用する。修補の範囲によって、細筆、平筆、小刷毛、糊刷毛を使い分ける。このほか、糊が手や道具、作業台など余計なところに付かないよう注意し、もし付いたときにはさっと拭き取れるよう、濡らした布巾を用意しておく。

 

修補に使う和紙は、本紙の厚みや色、補強の程度によって選択する。喰い裂きの和紙は毛羽の影が目立つこともあるので、あえて断ち切りの和紙を使用することもある。冊子や新聞などの紙資料は、最初から最後のページまで同じ箇所が破れていることがよくあるので、このように同じ破損を一度にたくさん修補するときには、断ち切りした短冊状の和紙をあらかじめ用意しておく。

 

最後に、修補した箇所が不均一な乾燥によってシワになったり、つっぱったりしないよう、不織布ろ紙、更に重石をのせてしっかり乾燥させることが、良い仕上がりのためのポイントとなる。

 

関連情報

今日の工房 2017年1月18日(水)修理に欠かせな道具・材料ーリーフキャスティング(漉き嵌め)で使用する竹簾

 

2016年5月25日(水) 平綴じされた機械パルプ紙製の小冊子やノートのヒンジ部破損の修理

機械パルプ紙製の小冊子や大学ノートなどによく見られる表紙ヒンジ部の損傷。ヒンジ部とは、冊子の表紙の開閉時の「ちょうつがい」になる部分。酸化と酸性劣化により紙の耐折強度が低下している機械パルプ紙の資料の場合、同じ位置で強制的に折られる表紙ヒンジ部は、真っ先に破断などの損傷が起きる。閲覧利用の際や、デジタル化撮影の際、あるいは冊子を開いた状態で展示する際などに、何度か冊子を開け閉めしていると、気が付いたら表紙がヒンジ部で切れてしまった、と言ったご相談もあります。

 

今回取り上げている小冊子は、本体は針金による平綴じで、表紙が本体の綴じ代で糊付けされ、それによりできた綴じ代の内側のヒンジ部に負担が集中して破れが起きている。修理方法の一つとして、表紙のちょうつがいの位置を移動し、冊子の開閉時に表紙が折れない構造にする処置がある。処置工程は、冊子の金属留め具を除去して表紙と本体を解体し、破れている箇所を和紙とでんぷん糊で修補する。表紙以外の本体を糸で綴じ直し、表紙は本体の綴じ代に糊付けしない。(平綴じでなく、かがり綴じでの綴じ直しができるのであれば、かがり綴じの方がさらに負担が少なくて良い。)これにより、表紙のヒンジ部は背表紙の表紙側の角に移った。

 

表紙と本体の接合方法については、資料によって様々であるため、各資料に合わせて十分な接合が確保できるような構造にする。

2016年5月11日(水) 電動ドリルで資料に穴を開ける。

電動ドリルで穴を開ける。目打ちが紙を「押し広げて」穴を開けるのに対し、ドリルは紙を「削り取って」穴を開ける。酸化・酸性紙化により紙力が低下した紙は、目打ちで押し広げて穴を開けると、周囲にひび割れが広がってしまう場合がある。特に小冊子に綴じ穴を開ける処置ではドリルを用いた方が資料にかかる負担が少ない。また、ハードカバーの外れた表紙を本体に再接合する方法のひとつのタケッティング法では、表紙ボードの断面から正確に細い貫通孔を開ける必要がある。このため、径が1㎜以下の刃を装着したペン型のドリルを使う。一見大胆な道具にも思えるが電動ドリルの使用が適している処置は多々あり、修理に欠かせない道具のひとつである。

2016年4月13日(水) ステープルやクリップなどの鉄製の留め具を安全に外すには

金属製の留め具の中でも鉄製のものは、時を経て空気中の酸素と水分に反応することで錆びが発生し、留め具そのものだけでなく、接触する本紙が腐食したり、汚れてしまう。また、糸の代わりにステープルを使うワイヤーソーイング法で綴じられた本のように、本の構造全体が崩壊することもある。

 

これらを安全に除去するために、資料の状態に合わせてマイクロスパチュラ、ニッパー等の道具を使い分ける。市販の文具のリムーバーは、劣化状態によっては、除去する際に無理な負荷がかかり、さらに資料を傷めることがあるので、特に貴重な資料等には用いない方がよい。また、錆びて脆くなった留め具は粉状に崩れることがあるため、本紙を汚さないようにドライ・クリーニングも同時に行う。

 

 

ステープルの除去

 

ステープルの足と本紙の間にマイクロスパチュラを差し込み、ステープルの足を立ち上げて、本紙をひっくり返し、ニッパーで挟んでまっすぐに引き抜く。紙力が低下している場合は、間にポリエステルフィルム等を挟んで本紙を保護しながら作業を行うと、さらに安全である。しかし、中には、酸性紙化が進み脆くなった紙や、薄い紙束等、ステープルの足を立ち上げる際の負担に耐えられない資料もある。そのような場合はステープルの足を資料面ぎりぎりのところでニッパーで切断する方が、手早く、安全である。また、雑誌や小冊子等からステープルを除去する際は、一度に引き抜くのではなく、数ページずつめくりながらステープルの足をこまめに切断し、その都度本紙を外す作業を繰り返すと、本紙にかかる負担が軽減できる。

 

 

クリップの除去

 

紙力が十分な場合は、長い輪の方を親指で抑えつつ、短い輪の方を持ち上げて除去する。紙力が低下している場合は、クリップの両面にポリエステルフィルム等を差し込んで保護した上で行う。しかし、本紙と錆が一体化してしまっていたり、紙が脆く、フィルムを差し込めないほど劣化している際は、ニッパーでクリップの上部を切断した方が安全な場合もある。

 

 

ピンや鉄釘の除去

 

紙力が十分な場合はそのまま引き抜くことができるが、紙力が低下している場合は、本紙とピンの間にフィルムを挟んで、そっと引き抜く。また、太い鉄釘等は、しっかりと握れるペンチやニッパーを使用して、釘全体を左右にわずかに回転させながら慎重に引き抜く。その際、釘の頭が深く埋まっていて、引き抜く際に道具の先端で傷つける恐れがある場合は、厚い紙等で本紙を保護する。

 

 

対象資料に合わせて適切な道具や除去方法を判断するには、経験と慎重な姿勢が求められる。

 

2013年01月17日(木)

原資料のマイクロ化・デジタル化に伴う解体・復元・容器収納作業。資料を代替化のために撮影する際、安全に撮影するのに必要な見開き具合を確保するのが困難な場合、予め解体を行う。撮影後は、再製本や新規表紙作成による綴じ直し、あるいは保存容器への収納を行う。いずれの行程も所蔵者様、撮影業者様、弊社の3社で事前に方針を決める。画像は簿冊(合冊製本)、タイトバック(本体の背と背表紙が接着された構造)の革装丁本、金属による平綴じの小冊子の形態の解体前、解体後、復元後、容器収納の例。

2011年09月29日(木)

ハードボードに資料の背幅に合わせたスジと、ヒンジとなるスジを入れた簡易表紙。シリーズものの小冊子を一つにまとめるときや、マイクロ化やデジタル化の撮影のために、資料を解体し分冊したものの復元に有効である。綴じ糸を簡単に緩めて解くことができるため、見開きを良くして資料を閲覧できる。

2010年02月18日(木)

新聞、楽譜、小冊子など、大きさや材質が様々な資料群。修補や脱酸性化処置を行ったあと、弊社製アーカイバル・バインダーに収納する。シェルボックス(夫婦箱)型の本体形状は、外部からの塵芥の侵入を防ぐ。また、資料を入れる不活性ポリプロピレンのリフィルは長期保存に適したものを使用しており、保存性と閲覧のしやすさを兼ね備えている。

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