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今日の工房 2025年 4月
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2025年4月25日(金) キッコーマン国際食文化研究センター様所蔵 広告資料の整理と保存 -アーカイバル・バインダーと特注アーカイバル・クリアホルダーの組み合わせ
キッコーマン国際食文化研究センター様よりお預かりした広告資料について、整理作業と保存資材への収納を行いました。
これらの資料はもともと、スクラップ帳に糊で貼付されていたもので、一部には過去の水損による水染みやカビ跡が見られる状態でした。約160点の広告資料を台紙から丁寧に剥がし、クリーニング、脱酸性化処置、破れの補修等を行った後、広告の種別やサイズごとに分類・整理し、全点について管理用のサムネイル撮影を行いました。最後に、広告資料という特性を踏まえ、閲覧者の印象に残る見せ方にも配慮した保存容器を製作しました。以下、その内容をご紹介いたします。
まず、外側の収納容器には「アーカイバル・バインダー」を使用しました。シェルボックス構造の容器にリングバインダーを組み込んだもので、紙資料のファイリング保存と閲覧を両立させる設計です。資料は透明なリフィルポケットに収めたまま、ページをめくるように閲覧できるため、書類、原稿、印刷物、写真プリント、ネガフィルム、スライドなど幅広い資料にご使用いただけます。標準サイズはA4・B4ですが、リングバインダーの数を増やすことで、大型や横長の資料にも対応できます。
収納用リフィルには「アーカイバル・クリアホルダー」を使用しました。通常、バインダーとセットで販売しているリフィルは、劣化により紙力が低下した資料に負荷がかからないよう、しなやかで柔軟性のあるポリプロピレン製のものを採用しています。これに対し、アーカイバル・クリアホルダーは、75ミクロンの厚みがある堅牢なポリエステル製で、一枚ものの大型地図や図面、ポスターなどの取り扱いもスムーズに行えるよう、物理的なサポートの役割も担っています。今回は、資料の状態や素材、製品の特長を照らし合わせ、広告資料のビジュアルイメージがより明瞭に伝わるよう、アーカイバル・クリアホルダーを選定しました。
中性紙の間紙を挟んだクリアホルダーには、バインダーに綴じられるようリング用の穴を開け、めくりながら閲覧できるよう加工しています。また、資料の分類が変わる部分には見出し付きのインデックスシートで仕切り、識別しやすいようにしました。透明度の高いフィルムを通して、ポスターやチラシの色彩が美しく映えるため、広告資料の整理・保管に最適です。さらに、資料量が多い場合でも、年代や製品の分類ごとに一括して保管・管理できる構成となっています。
後日、当該資料のご活用状況を拝見したところ、各フィルムの表面には管理用バーコードラベルが貼付されており、サムネイル付き資料リストと連携させて、より検索しやすい形で運用いただいておりました。
なお、同センターでは現在、収蔵品企画展『キッコーマンの広告史~1920年代から1960年代。激動の中で~』を開催中です(会期:5月30日〈金〉まで。平日のみ開催)。野田醤油株式会社(現キッコーマン株式会社)が、会社設立から戦争を経て、戦後期、高度経済成長期に至る激動の時代に制作した広告を俯瞰しながら、ブランド戦略の変遷をたどる企画展示をご覧いただけます。
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