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今日の工房 2019年 12月
週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。
2019年12月26日(木)2019年も残りわずか、今年も大変お世話になりました。
いつも当社ブログをご覧頂き、誠に有難うございます。2019年も残りあとわずかとなりました。年内の営業は12月27日(金)正午まで、年明けは1月6日(月)より営業いたします。
今年1年を振り返ってみますと、ICOM(国際博物館会議)京都大会への初出展をはじめとして、講習会やワークショップなども初めてお声がけ頂いた内容・機関がいくつかあり、新たなご縁の繋がりを感じることができた年でした。また、社員研修もいくつか実施した中で、夏に訪問した「特種東海製紙三島工場」では、アーカイバルボードの製造工程を間近に見て、あらためて、多くの方々の高い技術力と豊富な知識、企業努力によって支えられていることをスタッフ全員が体感できたとても貴重な機会でした。
また、下半期では台風による水損被害に関するご相談が多く、今もお問い合わせが途切れることがありません。当社では各所と連携し、資材提供を通じて微力ながら文化財復旧支援に携わらせて頂いています。復旧にむけて活動されているスタッフ・職員の方々の疲労困憊は計り知れず、ご尽力に敬意を表するとともに1日も早い復旧復興を祈念いたしております。
来年2020年は干支の最初となる子年です。新たな気持ちでチャレンジし、成長を目指し、さらにより良い製品・サービスをみなさまにご提供できるよう、スタッフ一同邁進してまいります。来年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
2019年12月11日(水)ポスターや図面をのばして収納。保管や運搬にも便利な「落し蓋」つき被せ箱。
ポスターや図面などを広げて保管したい場合、簡単なやり方としては、板に挟んで紐などで固定する方法が考えられます。
ただ、この方法で縦置きするにはしっかり固定しなければならないので養生の手間もかかり、枚数が多く厚みが出る場合は固定するのも難しくなります。
こうした時、弊社では「落し蓋」をつけて収納する方法をお奨めしています。この落し蓋は、箱の内寸法に合わせてボードの4辺を折り曲げ立ち上がりを設けた内蓋のような形状で、箱の側面につっぱるようにはまり、収納した資料を上から固定します。このような仕掛けでは落し蓋のはまり具合が肝になりますが、アーカイバルボードは通常の段ボールより硬く成形がしっかりできるため、ぴったりと箱に沿う落し蓋を作ることができます。
落し蓋がしっかりとはまることにより、湿気による波状のうねりや折れ・擦れを防いだり、若干カールした資料もある程度安定させ伸ばしながら保管できます。また、縦にしても中身が動かないため、何枚ものポスターを平判のまま持ち運びたいといったお客様にもお使いいただいています。
2019年12月6日(金)オリジナルの背表紙を生かして修理するための事前処置
革装丁本の背表紙は大気や光にさらされていることが多いため、よりレッドロットが進み亀裂や剥落が著しい状態になっているものが見られます。これらの革装丁本に対して、背表紙にある箔押しのタイトルや装飾を出来るだけ生かして修理を行いたい、というご相談をいただきます。
背ごしらえをし直す、表紙を再接合するといった構造的な修理を行うために、一時的に背表紙を取り外す場合がありますが、劣化した革は大変脆くなっているため、崩さずに現状を維持したまま取り外せるよう、あらかじめ養生の処置を行います。まず、革装部分には前処置としてリタンニング処置[※1]を行います。その後、でんぷん糊で和紙を貼って、ひび割れた表面を仮止めし養生します。乾燥した後、養生の和紙を支えに箔押しの状態を確認しながら、隙間にスパチュラを差し込んで取り外していきます。構造的な修理が完了した後は、背表紙を貼り戻し、養生の和紙はイソプロパノール水溶液で湿りを入れて取り除きます。欠失部分は染色した和紙で補い、オリジナルの背表紙を最大限生かして、見た目にもなじむように仕上げます。
レッドロットが著しく、オリジナルの背表紙が生かせない場合には、新規の背表紙を作成する修理も行います。
[※1]リタンニング処置: アルミニウムトリイソプロピレート、ベンジン、エチルアセテートを混合したリタンニング(re-tanning)溶液を塗布する処置。レッドロット現象が起きている革装部分に水分が入ると、黒く変色したり表面が硬く変質する。この前処置を行うことで、糊や水分のある材料を革装部分に使用してもシミや変色が残りにくくなる。
【関連リンク】革装丁本への保存修復処置事例