今日の工房 2019年 7月

週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。

2019年7月31日(水)大きい資料や、重たい資料には、「底板補強」でより堅牢な箱の仕様に。

一人では持てないほどの大きな資料や、重たい資料を保存箱に入れたい場合、底板を底面に貼り付け、二重にして補強する、「底板補強」という仕様があります。 弊社の保存箱の中では、額装絵画や大型楽器、民具など、重量物を収納することが多い台差し箱や被せ箱にあわせてご提案させていただくことが多いです。

 

大きな保存箱を取り扱う際には、底面にどうしても「ねじれ」や「たわみ」が生じてしまいますが、底面を二重に補強することで、剛性が高くなり、ゆがみによる資料への負荷を軽減させ、資料をより安定した状態で持ち運ぶことができます。 また、特に重い資料は底面に大きな力が加わるため、剛性が高く、重みでつぶれることもない、ポリプロピレン製のプラスチック段ボールを底板に使用する場合もございます。

 

「底板補強」の仕様は、資料の大きさや材質、重さや量をお伺いして、ご提案させていただきます。

続きを読む

2019年7月24日(水)新しい手ぬぐいが仕上がりました。

今夏もお客様にお届けする手拭いが仕上がりました。柄はこれまでと少し趣向を変えて弊社のロゴのアレンジです。包む、敷く、かけるなど使い方は様々ですが、例えば日焼け防止&冷房対策用のくびまきにいかがでしょうか?

続きを読む

2019年7月18日(木)汚れた紙資料の水性処置では、洗浄の前にまず「濡らす」ことがなぜ重要なのか?

紙資料の修理工程のひとつに、紙の汚れを除去するための洗浄処置があります。洗浄は、弱アルカリ性に調整した洗浄液に資料を浸したり、スプレーで噴霧して濡らしたりして、紙に付着している汚れや、経年により内部で生成された着色汚れ(発色団 chromophore)を除去し、可溶性の酸を洗い出すために行う処置です。見た目の仕上がりの良さだけでなく、紙の保存性を向上させる役割があることから、水性処置の第一段階として不可欠な工程を担っています。洗浄後は、やぶれの補修や、水性脱酸性化処置、抗酸化処置など、資料の劣化要因によってそれぞれの工程を選択しますが、特に酸化・酸性化が進行した紙への洗浄+水性脱酸性化処置は、紙の劣化に関する根本的な問題への対処方法です。そしてこれらの処置は、紙表面だけでなく繊維の奥深くまで水溶液が行き渡ることで、より良い効果が得られます。
 

 

紙の内部に水を行き渡らせるには、紙を均一に濡らせば良いのですが、文字情報が載っている紙資料の場合、サイズ剤(にじみ止め)が効いていて水分が浸透しにくいため水で濡らすのは意外と難しいことです。まずは、溶液が隅々まで行き渡るように「濡らし」という事前の準備を行います。
 

 

資料の基材(紙)とイメージ材料(インクなどの色材)が、水にもアルコールにも耐えられることをスポット・テストで確認したら、水とアルコール(エタノール、イソプロピルアルコールなど)の混合溶液を使って紙を濡らします。アルコールを加えて水の表面張力を下げることで、紙を素早く濡らし繊維の奥深くまで水分を運ぶことができます。紙が充分に濡れ色になったら紙を引き上げ、洗浄液に浸します。
 

 

水は表面張力が高い(※1)液体なので、時間をかけて無理に湿らせようとすると、資料に物理的な負担をかけることにもなります。水が紙に浸透するとき繊維を膨潤させる作用が働くため、繊維の構造的な変化と、紙に載っているイメージ材料の亀裂など、影響を及ぼす可能性があります。こうした変化を伴うからこそ素早く濡らすということも重要です。
 

 

※1 水の表面張力は72.75mN/m。対してエタノールは22.55mN/mで、ちなみに水銀は476.00mN/m。紙の修理に使われる溶液の中でも水の表面張力は高い方。

 

関連情報

 

参考文献
 
続きを読む

2019年7月10日(水)虫菌害・保存対策研修会の展示ブースで弊社製品のIPMへの効率的な導入などを事例と共に紹介しました。

公益財団法人文化財虫菌害研究所主催による「第41回文化財の虫菌害・保存対策研修会」が7月4日(木)・5日(金)の2日間、国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されました。今年度は、文化財分野における虫菌害に関する基礎知識のほか、展示収蔵施設における虫・カビの調査と結果の解析、各施設における虫菌害防除の取り組みの様子などをテーマとし、計8つの講義が行われました。研修会には「文化財IPMコーディネーター」の有資格者や資格更新者、取得希望者、文化財を保存管理する博物館・美術館、図書館等の担当者など、文化財に関する生物被害防除業務に携わる方々を中心に200名を超える参加がありました。

 

機器展示の弊社ブースではアーカイバル容器空気清浄機付「ドライクリーニング・ボックス」無酸素パック「Moldenybe®モルデナイベ」汚染ガス吸着シート「GasQ®ガスキュウ」新薄葉紙「Qlumin™くるみん」を展示しました。ご来場された受講者の方々からは、弊社製品に関するご質問のほか、自館で実施しているIPMを中心とした生物被害防除にどの様に組み込めるか、また、今後具体的な対策を講じる過程でIPMを効果的にかつ持続的に行うにはどうしたらよいかといったご相談もいただき、 事例を交えながら実践的な技術や製品の適切な使い方をご紹介しました。お立ち寄りいただいた皆様に心より御礼申し上げます。

 

【関連情報】

▶︎『今日の工房』2019年6月19日 共立女子大学図書館様の貴重書1900点のカビ被害のクリーニングから保存容器収納まで

▶︎『今日の工房』2014年09月26日 カビが発生した資料のクリーニング

▶︎『スタッフの力』2015年12月2日 資料に付着した汚れやカビのドライ・クリーニング

続きを読む
ページの上部へ戻る