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今日の工房 2019年 5月
週替わりの工房風景をご覧ください。毎日こんな仕事をしています。
2019年5月29日(水)夏休み明けの書庫にカビを発生させないために今、できること
昨年は猛暑が続いたこともあってか、特に夏休み明けの8、9月、さらに10月になってからも、書庫の資料にカビが生えてしまったので何とかしたい、という問い合わせをたくさんいただきました。ここ数日の5月とは思えない猛暑を体感すると、今年の夏も昨年並みになりそうで、カビ被害が増えるのではないかと心配しております。
昨年のカビ発生要因として一番多かったのは空調管理の不備によるものです。
・メンテナンスを怠り、空調が故障していた。
・冬の間、除湿器を停止し、そのまま春夏もつけ忘れてしまっていた。
など、特に閉架書庫などで人の出入りが少なく、気づいた時にはカビが発生していた、といことが多かったようです。
カビ胞子は空気中どこにでも存在するもので、カビが好む環境が整えばすぐに活性化したカビとなります。上記のような書庫の場合は、空気中に浮遊しているカビ胞子が資料表面の塵や埃を温床とし、空調の停止により湿度があがり、カビが活性化したということです。
これからの季節に備え、今の時期に書庫の空調の確認、資料のクリーニングをお勧めいたします。
2019年5月22日(水)アーカイバル容器の折り筋に骨ヘラでひと手間加えると、仕上がりがいちだんときれいになります。
弊社ではさまざまな形状や用途の保存箱を製作していますが、どの箱も弱アルカリ性のアーカイバルボードを折り込んだり貼り合わせて箱の形にしています。特に折り部分の加工は箱の成形にとって重要な部分で、そのひとつひとつが仕上がりに関わってきます。
この折り部分の加工で活躍するのが骨ヘラです。骨ヘラはボードや紙に筋を入れたり、折ったり、角をおさえたり、ほとんど手のように使う一番身近な道具です。
ボードの折り込み部分には機械で押圧した罫線や切込を入れますが、保存箱の素材として使われるアーカイバルボードは普通の段ボールをはるかに上回る硬さと強度をもつことから、そのままボードを折り込むと折線に沿って重なる紙同士の厚みで「反発」が生じます。この反発を解消せずに組み立てた箱は折り込み箇所が膨らみ、隙間や歪み、サイズが合わないなどといった不具合の原因になることがあります。
そこで、骨ヘラを使い、折線がV字型になるような筋をさらに入れて、ボードの反発を相殺し抵抗なくきれいにボードを折り込めるよう正確な折り込みラインを入れます。
また、完成した箱の角をヘラでひと撫でするだけでフォルムが整うので、見栄えの良いきっちりとした箱に仕上げる決め手として大変重宝しています。
2019年5月15日(水)NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。
NPOゲーム保存協会様からのご依頼でフロッピーディスクを長期保管するための専用容器を作成した。
ゲーム保存協会では、旧世代のデジタルゲームを扱う中で、フロッピーディスクやカセットテープなどのメディアを数多く所蔵しており、なかでも80年代のゲーム文化黄金期を伝える資料的意義の高い5.25インチフロッピーディスクと3.5インチフロッピーディスクの現物保管に注力している。併せてゲーム・デジタル・アーカイブとデータベース構築をすすめており文化財として継承に耐えうる適切な形での資料の保存に力を尽くしている。
フロッピーディスクには8インチ、5.25インチ、3.5インチなど様々な種類があり、これら磁気ディスクは湿気やホコリなどの汚れ、汚染ガス等の影響を受けやすい非常にデリケートなメディアだが、特にカビによる劣化に弱く、湿気の多い日本では保管に特別な注意が必要な資料である。
保存容器は酢酸他のVOCを吸着する汚染ガス吸着シートGasQ®を組み込んだ新きりなみ仕様。ガス吸着機能とともに、容器内の相対湿度を安定させる調湿効果を発揮し、環境要因からくる収納物の劣化を最大限に抑制できる。ゲーム資料は各々QRコードで管理され、中性紙でできた封筒と専用の保存容器に収納し、一定の温度・湿度管理のもとに保管されている。
関連情報
◆ Yahoo!Japan ニュース 2019年4月26日 コレクションは何と10万点! 有志の熱意と技術を結集したゲーム保存協会の取り組み
◆ 『今日の工房』2017年1月12日(木) ゲーム資料保存の喚起を促す小冊子『ゲーム保存の意義とその実践』–国内外の現状と課題、データ記録媒体の基本知識や保存等の実例も
2019年5月8日(水)差し込み箱から、より安全・容易に資料を取り出すためのお包み(上智大学史資料室様)
上智大学史資料室様から額装絵画を、これまでの茶段ボール製の差し箱からアーカイバル容器への入れ替えのご依頼をいただきました。
保存容器は保存容器の側面から資料を出し入れする差し込み箱。出し入れの際には、額装絵画に直接触れずに安全かつ容易に行いたいとのご要望です。
そこで、これまで使用されてきた不確かな素材の布袋に代わり、 アーカイバルボードでのロの字お包みを作製しました。強度もあり、資料に負担のない出し入れが可能となりました。