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2024年3月28日(木)中性紙管で作る太巻き芯:掛軸、巻子の安全な保管方法の一提案
太巻き芯は絵画や書跡の掛軸装、巻子装を保管する際に使う便利なアイテムです。特に、本紙が傷んで紙質が硬化しているものは、細く巻くと負担がかかるため、軸を挟み込んで太くし、本紙を大きく巻くことで、描画材の剥離や開閉による損傷・劣化を最小限に抑えます。太巻き芯は、掛軸や巻子装の形態に合わせた間接的な予防保存処置であり、巻き癖を和らげ、開閉による擦れや横折れを軽減する効果があります。
一般的な太巻き芯は杉や桐などの木材を使い、削り出して作られますが、弊社が製作したものは中性紙管を使用しています。紙管を使う場合は、まず紙管を2つに半裁分割します。しかし、この作業にはかなりの手間がかかり、さらに、スパイラル紙管(紙の帯をらせん状に巻きつけて製造される紙管)を半裁すると、その製造上の特性から、ねじれが発生して全体が歪んでしまうことがわかりました。この歪みを矯正し、全体的な寸法精度を向上させるために、プラスタゾートから切り出した支軸パーツを作り、それを2つの分割紙管に固定することで、この歪みを解消しました。また、紙管の両端に円形の保護材を設置し、プラスタゾートと一緒に半裁紙管に固定することで、さらに安定した状態になります。半月状のプラスタゾートは、積層した状態で均等に貼り合わせ、軸木の太さに合わせてカットできるだけでなく、軸木の歪みや軸首の形態に応じて形状を設計・切り出し加工することもできます。紙管を分割する加工には、半裁するための専用治具を開発しました。この治具を使えば、硬く丈夫な中性紙管を特別な機具なしで安定した状態で均等に半裁できます。この専用治具は紙管径に合わせて制作でき、様々なサイズの中性紙管に対応できます。
太巻を装着して閉じた際の開口部分には、わずかな隙間を残し、巻き始めの裂地を傷めないように配慮しています。軸受け付きの保存箱に収納すれば、掛軸に負担をかけずに安全に保管することができます。
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